モンゴルの希土類元素(REE)鉱床
(Garamjav, D. and Jargalan, S.; Introduction to REE metallogeny of Mongolia.  Mongolian Geoscientist, 35, 73-76.  October 2009.)


希土類元素(REE)はエレクトロニクスや自動車産業で重要な役割を果たしており、永久磁石、家電、自動車の触媒など今後とも利用が期待できる。過去10年間、世界市場は主に中国からの供給によってきたが、今後は中国国内の需要の拡大が予想され、中国からの供給は期待できない。
ここでモンゴルのREE鉱床について概略を紹介する。モンゴルのREEは鉱床(deposits)が5、鉱産地(occurrences)が71、鉱兆地(mineralized area) が260以上ある。成因的に大きく次の5グループに分けることができる。アルカリ花崗岩に関連するREE、閃長岩や霞岩に関連するREE、カーボナタイトに関連するREE、吸着型、漂砂鉱床である。なお、以下の記述で岩石名について和名があるものはそれを使うが一般的でないものについては英語を併記する。鉱物についてはなじみのある和名だけを使い、英語名を概ね使う。地名は、日本でもよく知られている地名以外は英語表記のまま使う。煩雑であるが誤解を生じないためである。

アルカリ花崗岩関連鉱化作用
アルカリ花崗岩に関連する鉱化作用には、西モンゴルのKhalzan Buregtei鉱床、南モンゴルのKhan Bogd鉱床、それに西ならびに南モンゴルの多くの鉱産地が含まれる。鉱床はパーアルカリペグマタイトを含む分化が著しく進んだマグマに伴う。ホストの花崗岩はカリ長石、石英、アルバイト、アルベノ閃石、エジリン、蛍石、それに多くのREE鉱物からなる。REE鉱物の組合せは次の通りである。
Columbite-Pyrochlore-Zircon-Elpidite-Fluorite
Pyrochlore-Columbite-Zircon-Xenotime
Zircon-Pyrochlore-Elpidite-Armstrongite
Zircon-Fergusonite-Columbite-Pyrochlore-Chevkinite

ネフェリン閃長岩に伴う鉱化作用
ネフェリン閃長岩に伴うREE鉱化作用は、北モンゴルに認められ、はんれい岩、イジョラ岩(ijolite)、urtite、フォヤ岩(foyaite)、閃長岩、ネフェリン閃長岩を伴う。Ujigin GolやArasan Gol地域に例がある。ネフェリンに富むものでは、それが30%から90%に至る。鉱物組合せは次の通りである。
Cyrtolite(高濃度Uジルコン)-Pyrochlore-Flourite-Eudialyte
Pyrochlore-Columbite-Zircon-Xenotime-Gagarinite
Zircon-Britholite-Rinkolite-Pyrochlore-Eudialyte-Monazite

カーボナタイト関連鉱化作用
カーボナタイトに関連するREE鉱化作用は後期アルカリ火山岩深成岩に伴うもので、南モンゴルのshgai KhudagやLugiin Golにその例が見られる。鉱床は、(1)0.1〜0.8%のREEあるいはlight REEに富み18%のSrを含むカーボナタイトとそれに取り込まれたトラカイト角礫岩、(2)1.0〜14.5%ものREEを含む磁鉄鉱-燐灰石岩、(3)1〜18%のREEを伴うバストネス石(bastnaesite)カーボナタイトの3つに分けられる。これらはいずれもbastnaesite、炭酸塩、蛍石、celestine、barite、cerrusite、magnetite、apatite、monaziteを含む。
そのほかのカーボナタイトはBayan Khushuu、khotgor、UlgiiそれにTsogt Ovooに分布している。そこでは、深成岩あるいは後期古生代の火山岩や堆積岩に貫入する幅1-2m程度の岩脈として産する。
これらのカーボナタイトのREE鉱化作用に関係する鉱物組合せは次の通りである。
Synchysite-Bastnasite-Magnetite-Flourite
Bastnasite-Flourite-Apatite-Magnetaite
Celestine-Barite-Fluorite-REE

ウラン吸着型鉱床と漂砂鉱床
ウラン吸着型鉱床のREE鉱化作用は東モンゴルで知られているが、調査はまだ十分ではない。次の2つの鉱物組合せが知られている。
REE-Uranospinite
REE-Nasturan-Coffinite
前者の例は、南東モンゴルのChoir陥没帯のKharaat鉱床である。後者の例はSainshand陥没帯のNarst鉱床である。
REEの漂砂鉱床は、Arkhuruut-Dund BayanならびにTsagaan Chuluutの2ヶ所が知られている。花崗岩由来のモナズ石が集積したものと考えられている。

鉱床区
以上の各種鉱床を地域的にまとめてみると、モンゴルのREE鉱床区は、大きくTuva-Hubsugul鉱床区、中央モンゴル縁辺区、南モンゴル鉱床区の3つに分けることができる。
Tuva-Hubsugul鉱床区:アルカリ花崗岩に伴う鉱床からなる。鉱床区はさらにDeluun-Altan KhokhiiとUran Khem-Alag Erdene地区に細分できる。前者にはKhan Khokhiiなどのアルカリ花崗岩が含まれる。後者にはアルカリ花崗岩のほか霞岩やそのほかのアルカリ岩にREEが伴う。
中央モンゴル縁辺区:ハンガイ−ヘンティ隆起帯のまわりを占めるもので、さらにNorth Khangai-Selenge、Sharga-Gobi Altai、East Gobi-Kherlenの各地区に細分できる。North Khangai-Selenge地区ではSouth Songinoなど7ヶ所の鉱床が知られている。Sharga-Gobi Altai地区にはIkh Bogdなど3ヶ所に鉱化作用の可能性がある。East Gobi-Kherlen地区では4ヶ所で鉱化作用の可能性がある。
南モンゴル鉱床区:Main Mongolian LineamentならびにGobi-Tein Shanの地区にさらに分けられる。前者にはBaruun Khuurai-Aj Bogdなど3ヶ所に有望な鉱床がある。後者では5ヶ所で鉱化作用の可能性がある。

以上。なお、鉱床型は原著のTable 1、鉱床区はFigure 1にまとめてある。