3環境調査(水質分析と放射線量測定)

 

3.1水質調査(pH(水素イオン指数)と導電率について)

序論

酸性とアルカリ性を考える

酸性(例;レモンのしぼり汁)

 すっぱい、青色リトマス紙を赤く変える、鉄スズ亜鉛などの金属と反応して水素を出す。

アルカリ性(例;石けん水)

 ぬるぬるして苦い、赤色リトマス紙を青く変える、炭酸ガスをよく吸収する。

 

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pHとは

水素イオン指数(potenntial of hydrogen)ピーエッチまたはペーハーと読む。

酸性あるいはアルカリ性の程度をあらわす単位。

  酸性 中性 アルカリ性

  pH0----pH7----pH14

pH値のいろいろ

 水:水道水6.5、井戸水7.0-8.0、海水8.0-8.5

 飲物:スポーツドリンク3.0-4.0、日本茶4.5-6.0、牛乳6.7

 食べ物:レモン2.5、ヨーグルト4.4、こんにゃく12.2

 生活用品:石けん液7.0-10.0、灰(線香)12.5

 

pHと溶液との関係(ウィキペディアより)

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/2/23/216_pH_Scale-01.jpg

 

酸性アルカリ性の概念(pHの定義)

・水溶液の酸性やアルカリ性は水素イオンの濃度で決まる(どれだけの割合で水素イオンが含まれているか)。

・水溶液では、[H+][OH-]=10-14 (=一定)

・純水や中性溶液では、[H+]=[OH-]=10-7

pHの定義 pH=-log10[H+]、そこで中性の溶液ではpH=7

 

理論的なpH

・水素イオンがいくつもあるとそれぞれが衝突することがあり、動きに制限が出る。水素イオンの濃度ではなく活量がpHに関係する。

実際の測定

・ところが、理論計算は不可能。実際の測定では、pHの値が一定の水溶液(標準試料)と比較してpHを測定する。

 

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(話題提供)

酸性雨

・川や海の水が蒸発して雲になり雨となる

・雨はいわば蒸留水、中性(pH=7)で導電率(μS/cm)は低い。

・大気中の二酸化炭素(CO2)が雨に溶けこむ pH=5-6くらい。

・工場排ガスや自動車排ガスのSO2NOXが硫酸や硝酸になり雨を酸性にする。pH=4になることもある。

・酸性雨の影響で建物や遺跡・文化財の腐食がおきる。

 

酸性雨で被害を受けた木々(ウィキペディアより)

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/0/0c/Acid_rain_woods1.JPG

 

河川のpH

・河川のpHを測定すると、8から9くらいのことがある。藻類による光合成によるものと考えられる。

・空気中の二酸化炭素が水中に溶け込み、炭酸イオンを生じるとpHが下がり、逆に藻類の光合成によって水中の炭酸イオンが消費されるとpHが上がる。

 

沖縄県衛生環境研究所(2006)より

https://www.pref.okinawa.jp/site/hoken/eiken/news/documents/12page3.pdf#search='%E6%B2%B3%E5%B7%9D%E3%81%AE%EF%BD%90H'

 

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導電率(電気伝導率

液体中での電気の流れやすさを示す指標。

物質が溶け込むと電気が流れやすくなり、そこで、導電率とは液体中にどれくらいの物質が溶け込んでいるか(イオン化しているか)を示す指標となる。

例:

海水 塩分がたくさん溶解しているので導電率は非常に高くなる。

雨水、河川水、湖水 本来溶解しているものが少ない水なので、導電率は非常に低くなる。

水が汚染されると導電率が上昇する。導電率は、雨水、河川水、湖水の汚染の指標となる。

 

導電率の測定方法

・交流二電極法 溶液をはさむ電極の間を流れる電流の大小を測定する。

・電磁誘導法 溶液をはさむ2つのコイルの間で生じる誘導電流の大小を測定する。

 

導電率の概念

・オームの法則 電流は、電圧に比例し、抵抗に反比例する。つまり電流=電圧÷抵抗

・単位は、電流:アンペア(A)、電圧:ボルト(V)、抵抗:オーム(Ω)

・抵抗の逆数は電気の流れやすさの指標でコンダクタンスといい、ジーメンス(S)という単位を使う。

・導電率測定セル(電極)はあるセル定数を持っている。

・抵抗=r(抵抗率)×セル定数

rの逆数の1/r=kが導電率で、単位はS/cm、その1000分の1mS/cm、そのさらに1000分の1がμS/mとなる。

 

動画:導電率測定の原理(514秒)、基礎知識がないと少々わかりにくい。

https://www.youtube.com/watch?v=Wilofb2k2sU

 

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実習1 飲料水などでpHと導電率を測ってみる。それらの数値の順に並べてくらべる。

実習2 大学近くの池や河川でpHと導電率を測ってみる。そのほかのイオンについても測る。

実習3 別の時期に同じ場所で測定する。季節変化などあるか考える。

 

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3.2放射線量を測る

放射能

・アルファ(α)線:ヘリウムの原子核、紙1枚でさえぎられる

・ベータ(β)線:電子、薄いアルミ板やプラスチック板でさえぎられる

・ガンマ(γ)線:電磁波、物質を透過する力が強い。鉛や鉄でさえぎる。

線量計は、ガンマ線(および宇宙線)を感知する

 

放射能の表し方

・放射線を出す側の単位

 放射能: ベクレル(Bq) 1秒間に原子核が壊変する数。

・放射線を受ける側の単位(Receiver side)

放射線量 (Radiation dose)

 吸収線量:グレイ(Gy)、放射線があたってどれだけのエネルギーが吸収されるかを表す。1Gyは、吸収されたエネルギーの単位で1ジュール(J)/kg

 実効線量(等価線量):シーベルト(Sv) 、吸収線量だけではどれだけの影響(体へのダメージ)があったかわからない。そこで受ける側がどれだけの影響があるかを表す単位。β線とγ線は1、α線は20という荷重係数をかけて求める。

 

線量率(Dose rate) 一定時間あたりの線量。例、Sv/h(シーベルト毎時)

1Svは大きいため、普通はもっと小さなミリシーベルト(mSv, 1/1000Sv)やマイクロシーベルト(μSv=1/1000000Sv)を使う。

・岩石の性質などは単位時間あたりの量μSv/hを使うのが便利。

例:花こう岩(Granite) 0.05-0.08 μSv/h、はんれい岩(Gabbro) 0.02-0.04 μSv/h、流紋岩(Rhyolite) 0.04-0.07 μSv/h、安山岩や玄武岩(Andesite, Basalt) 0.02-0.03 μSv/h

 

話題提供:放射線量と実生活

・日本の自然放射線量(地質学会より)

http://www.geosociety.jp/uploads/fckeditor/hazard/2011/daishinsai/20110412imai/Radiation-m2.gif

地質と密接な関係があることがわかる。

 

・日常生活と放射線(電気事業連合会)

https://www.ene100.jp/www/wp-content/uploads/zumen/6-2-1.jpg

 

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実習1 線量計で、室内や大学構内の放射線量(空間線量)を測ってみる。岩石の放射線量も測ってみる。

空間線量 地上1mの線量。地面からの放射線、宇宙からの放射線の線量の和となる。

岩石の線量 直接岩石に接して測る。

 

実習2 地質調査実習の際、放射線量も測定する。

 

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自宅待機となった場合の実習案

 

ZOOM授業で概要を30分講じる。1時間後に再びZoomで各自の観察実験結果を述べてもらう。

実習

いくつかの飲み物を飲み比べ、pHの大小を推定してみる。大学に来る機会に実際に測ってみる。

 

実習

石垣、墓石などで酸性雨の影響が見えるか観察する。

墓石ならば、建立年が記されているので、古いものと新しいもので表面の様子を観察してみる。

 

実習

日本列島の放射線量の地図を見て、どこで放射線量が多いか、あるいは少ないかをまとめる。

日本の地質を参考にしてどんな岩石の影響があるかを考える。

 

実習

健康診断や歯科治療で放射線を浴びたときの線量を電気事業連合会の資料で調べる。通常の生活での線量も加味して年間どのくらいの放射線を浴びているか求める。それは安全基準に収まるか。