科学と人間社会U(地質・鉱物・環境と社会)   2024.08.30r

鉱物資源と経済

鉱物資源は社会の基盤(きばん)を支えている。経済や産業とからめて資源動向を解説する。

1 資源のかたより(つづき)

2 鉱物資源と経済−米国の製造業(せいぞうぎょう)を例に

3 鉱物資源の動向 過去,現在,未来

参考 E-Book,あおぞら文庫,動画

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要点

・資源のかたよりの例:オーストラリアは世界の鉄鉱石の3割強を生産

・鉱物資源は,鉱山で掘り出し,選鉱と製錬を経て素材に加工され,製造業で製品となる

・新産業創出であらたな資源(元素)を利用するようになってきた

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小問一覧(自習効率をあげるため,資料中の問いをここにまとめる)

問1 資料を参考にして,鉄鉱石とニッケルの生産国上位3つあげる。

世界の鉄鉱石生産量(グローバルノート)

https://www.globalnote.jp/post-1948.html

世界のニッケル生産量(グローバルノート)

https://www.globalnote.jp/post-3123.html

(回答例と解説を1まとめの後に記す)  回答例

問2 資料を参考にして答える。

1人あたりのGDPの高い国で8万ドル以上の国はどこか。

米国や日本のGDPはどのくらいか。

・GDPが1万ドル以下の国はいくつあるか。

資料:世界の1人あたりの名目GDP国別ランキング (グローバルノートより)

https://www.globalnote.jp/post-1339.html

(回答例:3まとめの後) → 回答例

問3 世界のエネルギーの増え方が大きくなるのはいつか。それはなぜか。

資料 世界のエネルギー消費量と人口の推移 (資源エネルギー庁111-1-1図)

https://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2013html/1-1-1.html

(回答例:3まとめの後) → 回答例

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1 資源のかたより Distribution of mineral resources

前回,銅鉱床の分布にかたよりがあり,それは地質の性質によることを述べた。そのほかの資源でも分布にかたよりがある。

 

世界の鉄鉱石生産量(グローバルノート)

https://www.globalnote.jp/post-1948.html

世界のニッケル生産量(グローバルノート)

https://www.globalnote.jp/post-3123.html

 

問1

上のリンク先または下の表を参考にして,鉄鉱石とニッケル鉱の生産国上位3つあげよ。

 

鉄鉱石生産上位5ヶ国  USGS (2024)より

 

2020   千トン

2023   千トン

埋蔵量 百万トン

オーストラリア

912,000 (565,000)

960,000 (560,000)

58,000 (27,000)

ブラジル

368,000 (247,000)

440,000 (280,000)

34,000 (15,000)

中国

360,000 (225,000)

280,000 (220,000)

20,000 (6,900)

インド

204,000 (127,000)

270,000 (170,000)

5,500 (3,400)

ロシア

100,000 (69,500)

88,000 (58,000)

29,000 (14,000)

世界総計

2,470,000 (1,520,000)

2,500,000 (1,500,000)

190,000 (87,000)

鉄鉱石産出量,かっこ内は鉄分量,単位は千トン

埋蔵量表記も同様,ただし単位は百万トン

参考 鉄鉱石量と鉄分量の例

鉄鉱石の鉱物として赤鉄鉱を例にすると,化学組成はFe2O3で分子量は160,2Feで112,鉄鉱石(赤鉄鉱)と鉄分比は3:2くらい。鉄鉱石の鉱種は,いろいろあるので国によってその比が異なる。

 

ニッケル生産量上位5ヶ国 USGS (2022, 2024)より

 

2020

2023

埋蔵量

インドネシア

711,000

1,800,000

55,000,000

フィリピン

334,000

400,000

4,800,000

ロシア

283,000

200,000

8,300,000

ニューカレドニア

200,000

230,000

7,100,000

オーストラリア

169,000

160,000

24,000,000

世界総計

2,510,000

3,600,000

>130,000,000

単位はトン

 

(回答例と解説を1まとめの後に記す) → 回答例

 

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1のまとめ

鉱床の分布は地域にかたよりがある。例えばオーストラリアは,世界の鉄鉱石の3割強を生産している。

 

1の回答例

グローバルノートとUSGSの統計年次が異なる。どちらの資料でも生産国上位3ヶ国と順位は変わらない。

鉄鉱石:オーストラリア,ブラジル,中国

ニッケル:インドネシア,フィリピン,ロシア

補足:鉄とニッケルの地質学的背景と用途

鉄:地球の大気に酸素が含まれるようになったときに,それまで海水に溶けていた鉄分が沈積した。現在の世界の大規模な鉄鉱床はこのようにしてできた。特に27億年前‐19億年前の時期に非常に大規模な鉱床が形成された。

鉄は産業の基礎として多くの場所や製品として使われている。身近では刃物,鍋,やかん,パイプなど,身近なものに鉄が使われている。鉄道の車両や線路,鉄橋はインフラの代表である。

ニッケル:ニッケルは岩石では超苦鉄質岩(ちょうくてつしつがん)に産出する。ニッケルは耐食性が高い。導電性も高い。そこで装飾用のめっきに使われ,あるいは電気接点のめっきに使われる。

ステンレス:鉄とクロムにニッケルが加わりステンレス鋼となる。身近には刃物,フォーク,スプーンの多くはステンレス製である。自動車のボディーなどにも使われる。ニッケルは銅と合金で硬貨に使われる。50円玉や100円玉がその例である。

 

世界の鉄鉱床(あぜっ地理)

www.azeta.jp/tiri/6-2/kousanshigen.html

ハマースレイ縞状鉄鉱床,西オーストラリア北西部の24億年前に形成された鉱床(岐阜大学地学教室)

http://chigaku.ed.gifu-u.ac.jp/chigakuhp/html/kyo/chisitsu/chisou/bif/14.html

ニッケル鉱床(JOGMEC, 2018; このレポートの図2が世界のニッケル鉱山分布)

http://mric.jogmec.go.jp/reports/mr/20180628/87222/

 

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2 鉱物資源と経済 (米国の例, 2023) Mineral resources with special reference to manufacture in USA

資源動向の現状と将来をみて,社会にどんな影響を与えるかを考える。まず,鉱物資源がどのように経済にかかわっていくか,米国を例に見る。2021年の統計にもとづく。

参考資料:USGS (2024): Mineral commodity summaries 2024. USGS.

 

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鉱物資源原料材での経済

鉱山の採掘で,有用成分(元素)を含む鉱床から粗鉱をとりだす。粗鉱から,不要な岩石をとりのぞき,有用な鉱石鉱物を集める。これは「選鉱(せんこう)」。次に有用な鉱石鉱物の化合物から不要な元素をとりのぞく。これは「製錬(せいれん)」作業。その一方,資源ごみからスクラップを集める。スクラップは製錬作業の流れに加わり,一部はスクラップのままで輸出される。それぞれの段階で利潤(りじゅん)が出る。

 

2023年のそれぞれの段階で出る利潤を記す(USGS, 2024)

・米国の鉱山から採掘される鉱物資源 1050億ドル

・このうち米国の鉱物資源純輸出 47億ドル 

  (輸出総量 106億ドル − 輸入総量 59億ドル)

・米国国内でリサイクルされる金属や鉱物 450億ドル

・米国からのスクラップ純輸出 170億ドル

  (輸出総量 20億ドル − 輸入総量 80億ドル)

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鉱石は鉱山から採掘される。鉱山には,屋外で大規模に地面を掘り起こす“露天掘り”と山にトンネルを掘って鉱石を掘り進める“坑内掘り”がある。それぞれのようす(雰囲気)を以下に示す。

 

露天掘り(ろてんぼり)

モンゴルのボロー金鉱山 (高橋撮影)

 

・大規模な露天掘りの例 チリのチュキカマタ鉱山(ウィキペディアより)

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/1/1a/Chuquicamata-003_02.jpg

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/64/Chuqui001_02.jpg

 

坑内掘り(こうないぼり)

可児市鳩吹山,マンガン鉱山坑口跡(高橋撮影)

 

・廃止鉱山坑内を観光資源として利用している例 明延鉱山(養父市観光協会より)

https://www.yabu-kankou.jp/wp-content/uploads/829ee56f8b788f53bee097461cbcb3e9.jpg

https://www.yabu-kankou.jp/sightseeing/akenobe

 

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選鉱や製錬とは何か,ここで言葉を整理する。住友金属鉱山HPによる。

・原鉱あるいは粗鉱(Crude Ore)地表にとりだされた資源。

・選鉱(Ore dressing)原鉱から目的の元素を含んだ鉱物(鉱石鉱物)を分離すること。不要鉱物は脈石(Gangue)と呼ぶ。原鉱を鉱石鉱物の粒子サイズに粉砕し,表面張力,比重,磁性などの性質を利用して分離する。得られた資源は精鉱(Concentrate)不要なものはズリあるいは尾鉱(Tailing)と呼ぶ。石炭ではボタと呼ぶ。

・製錬(Smelting)目的鉱物中から目的元素を分離すること。高温で行う乾式製錬,低温で行う湿式製錬がある。特に高品位精製を行う場合は,精錬(Refining)という。

得られた資源名は一定していない。鉱種(Mineral commodity),鉱石鉱物(Ore Mineral),元素(Element)の名称を使う。不要物をスラグ(Slag)とか鉱滓(こうさい)と呼ぶ。

 

選鉱の例 浮遊選鉱

粉砕した岩石(原石)に界面活性剤や油脂を混ぜた液体でかくはんし,有用鉱物を泡に凝集させ浮上させる。有用鉱物を含んだ泡の層を集め鉱石と水分・薬品を分離して目的鉱物を回収する。

 

泡沫浮選図解(ウィキペディア)

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/1/19/FlCell.PNG

この図のPULPは,鉱石を粉砕して起泡剤などと混ぜた泥状流体。

 

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 「製錬した鉱物材料から最終的な製品になるまでに価値を生み,国内経済に貢献する。」

(1)鉱石が加工(製錬)されて,製造業で使う原材料となる。この段階での利潤は米国では次の通り。

・米国内で加工された原材料 8900億ドル

・加工された原材料の純輸入 1020億ドル (輸入総量 2030億ドル − 輸出総量 1010億ドル)

(2)材料は製造業にまわり製品となり経済的価値が増す。

・鉱物材料を利用する産業の経済(38400 億ドル)は,米国の経済 (国内総生産 273560億ドル)に貢献,すなわち,この最終製品に至り,米国経済全体の約15%を占めている。

・さらに製品から情報産業やサービス業などであらたな価値が生まれている。

 

上記の鉱山での鉱物採掘,加工(製錬),輸出入を経て,製造業で製品化していく流れのまとめ

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米国経済における非燃料鉱物資源の役割(2023年) USGS (2024)

 

鉱物資源正味輸出     47億ドル 

金,ソーダ灰,亜鉛精鉱など

輸出106億ドル

輸入53億ドル           ↑

国内鉱山から鉱物資源  1050億ドル ⇒ 国内鉱産物加工  8900億ドル ⇒ 製造業  38400億ドル ⇒ 米国経済(国内総生産)273560ドル

 銅鉱石,鉄鉱石,砂礫など         アルミニウム,レンガ,セメント,   鉱産物加工品利用国内産業

 1050億ドル                                   銅,肥料,鋼など

                           8900億ドル               

国内リサイクル金属・鉱物450億ドル   鉱産物加工品正味輸入1020億ドル

アルミニウム,ガラス,鋼          金属,化学化合物など

430億ドル                       輸入2030億ドル

↓   輸出1010億ドル

スクラップ正味輸出     170億ドル

金,鋼など

輸出280億ドル

輸入110億ドル

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これは米国の例である。

日本であれば,「鉱山から鉱物」の部分は小さくなり,「鉱物資源輸出」が「鉱物資源輸入」となり矢印は下向きとなる。

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鉱石から製品化していく流れを鉄鋼業でみてみる。

日本では鉄鉱石(てっこうせき)や石炭の輸入からはじまり,鉄の不純物をとる,形を整えるなど段階を追って鉄製品となっていく。

 

その流れを示す(日本鉄鋼連盟HPより)

https://www.jisf.or.jp/kids/shiraberu/index.html

 

付録に記したポハン製鉄所の動画も参考になる。

動画:製鉄工程(ポハン製鉄所) (POSCO) 643

https://www.youtube.com/watch?v=DwiIzb9KNfQ

 

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鉱物資源からとりだした有用物が段階を経て加工され,製品となる過程を経済の流れでみたが,具体的な製品の例として風力発電所をとりあげる。

・プロペラや電線があらたに必要だが,それは鉱物資源から取り出した金属が使われている。

・送電線があらたに必要でそれには銅が使われる。

・風力発電所が普及したのは,強力な磁石が使われて発電機の小型化が可能となったから。この強力磁石の実現は希土類(レアアース)の利用による。

・風力発電所は人里から離れたところが多い。そこに至る道路などのインフラ整備でセメント資源を使う。

 

風力発電用風車(北海道) ウィキペディアより

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/c/c8/Electricity_generating_windmills_in_Hokkaido.jpg

風力タービン(水平軸プロペラ式の仕組み) ウィキペディアより

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/5/52/EERE_illust_large_turbine.gif

 

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2のまとめ

鉱山から得た原鉱(粗鉱)は,選鉱,製錬をへて製錬鉱となり,製造業にまわって製品になり,価値が増していく。つまり鉱物資源は段階をへて製造業と進み,経済に貢献する。

 

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3 鉱物資源の動向 Global trend - Past, Present and Future

鉱物資源の使い道や使う量がどう変わってきたかを考える。生活向上のため,エネルギー・原材料の消費が増える。新産業が創出され,いままで使っていなかった資源をあらたに利用するようになる。

参考資料

Vidal, O. et al. (2017) Global Trends in Metal Consumption and Supply: The Raw Material - Energy Nexus.  Elements, 13, 319-324.

 

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移動の手段の変遷

移動に徒歩や馬車では石炭や石油などは使わない。早くそして遠くに移動するため,自動車や航空機を利用し,大量のエネルギーを消費するようになる。

移動手段の変遷の例を以下に示す。

 

・かごで移動 ウィキペディアより

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/2/20/Kusakabe_Kimbei_-_49._Kago%2C_Travelling_Chair.jpg

・馬車で移動 ウィキペディアより

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/e/e7/Anoniem_002.JPG

・新幹線で移動 ウィキペディアより

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/9/9d/Shinkansen-0_300_700.JPG

・航空機で移動 ウィキペディアより

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/f/f3/Ba_b747-400_g-bnle_arp.jpg

 

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住居の変遷

竪穴式や江戸時代までの住居では電気を使わない。現代は快適さを求め,明かりだけではなく,エアコン,エレベーターなどエネルギーを消費する生活となっている。住居の例を以下に示す。

 

・竪穴式住居(ウィキペディアより)

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/5/5a/Yoshinogari-iseki_tateanashiki-juukyo.JPG

・民家(ウィキペディアより)

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/e/e8/Hakogike_house01.jpg

・マンション(ウィキペディアより)

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/8/8e/Condominium_kuala_lumpur.jpg

 

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鉱物資源需要増大

 

世界中の国が生活水準の向上をめざし,鉱物資源などの原材料需要が増えている。

(1) 人口増加,収入増加,生活水準の向上によって「エネルギー・原材料需要が指数関数的に増加している。

(2) 最貧国国民の生活向上のため,エネルギー・原材料消費が増加している。

 

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消費の中身の変化

豊かな生活を求め,国が成長を続ける。その結果,鉱物資源消費が増えてくる。成長の段階で消費の中身が変わってくる。

(1)工業化の最初の段階では,インフラ構築に力が注がれる。例えば,道路,鉄道,橋の構築である。この建物,交通,通信,エネルギーの整備では,構造物用の原料を消費する。

(2) 一人あたりGDP2万ドルに達するあたりでインフラ整備が満たされ,構造物用の原材料消費は落ち着く。

(3)人口の多い国の大部分は,一人あたりGDP15000ドル以下である。したがって,2万ドルに達するまで,それらの国では工業化に向け原材料消費が増加し,インフラ整備の資源消費が続く。そのような国は,概して人口が多いので資源の消費量は多い。

 

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資源消費の将来

一人あたりのGDPは国によって違う。少ない国の多くはインフラが整うまで大量の鉱物資源を消費する。各国のGDPを見て資源消費の将来を考える。

 

世界の1人あたりの名目GDP国別ランキング (グローバルノートより)

https://www.globalnote.jp/post-1339.html

問2

この図で,1人あたりのGDPの高い(8万ドル以上)の国はどこか。

米国や日本のGDPはどのくらいか。

GDP1万ドル以下の国はいくつあるか。

(回答例:3まとめの後) → 回答例

 

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人口とエネルギー消費

人口とエネルギー消費ののびはどうなっているか,エネルギーと人口の推移から問に答える。

 

問3 下の資料を参考にして,世界のエネルギーの増え方が大きくなるのはいつか。それはなぜかを考える。

資料 世界のエネルギー消費量と人口の推移 (資源エネルギー庁111-1-1図)

https://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2013html/1-1-1.html

 

(回答例:3まとめの後) → 回答例

 

新産業創出とその波及効果

産業構造の変化で新産業が生まれる。例えば,持続可能な発展のために化石燃料から再生可能エネルギー利用に進み,新産業が生まれている。そのためにいままで使っていなかったあらたな資源が必要となる。再生可能エネルギー利用が叫ばれ,新産業が生まれ,さまざまに波及する。

・風力発電:本体の構造物,発電機,強力磁石,設置場所の送電網整備等々に波及する。 

・ソーラーパネル製造と太陽光発電:パネルの原料のシリコン確保,蓄電池,送電網整備など。

 

あらたな鉱物資源の需要

新産業のためにあらたな鉱物資源が必要となる。持続可能な社会実現のため,低炭素エネルギーへ移行し,そのためのインフラストラクチャーは多くの新たな原材料を必要とする。その例を羅列してみる。

・大量の構造物用鉱物資源 インフラ整備で従来同様にFe(), Cu(), Pb(),セメント

・ハイテク用の鉱物 Sb(アンチモン), Co(コバルト)

・風力発電タービンのモーターの強力磁石 REE (希土類)

・電極薄膜のGa(ガリウム), In(インジウム), Se(セリウム)

・ハイブリッドまたは電気自動車バッテリーのLi(リチウム)

・燃料電池で使われるプラチナ族金属(PGMs)

 

風力発電のしくみ(関西電力グループ)

http://media.kepco.co.jp/_ct/17524643

電気自動車普及のカギを握るバッテリー生産とリサイクルの課題(キーエンス)

http://keyence.co.jp/ss/general/automotive-manufacturing/002/

 

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資源を消費しても埋蔵量が増えるのは,どうしてか?

現代は資源を大量に消費している。このままで資源はなくならないのだろうか?資源生産が需要に応えられるだろうか?  

・採掘可能な鉱物資源は一見減少しているように見える。

・いくつかの金属は生産のピークをすぎたか近い将来ピークを迎えそうである。

・しかしながら,テクノロジーの進展で新たな鉱床が見つかる,あるいは技術が進んでそれまで資源と見ていなかった岩石から金属がとりだせるようになる。このための多くの資源は50年あるいは100年前より埋蔵量は多くなる

 

かつては採算がとれなかった岩石(鉱物資源)でも製錬技術が進んで採算がとれるようになった。

・エネルギー全体の約10%が鉄鋼,セメント,アルミニウムの生産に消費されている。

・将来の資源はエネルギー供給次第である。

・エネルギーを要し,鉱物資源生産は,将来限界があるように見える。

・しかしながら,エネルギー効率化でエネルギー必要量増加を補っている。

 

エネルギー効率が良くなっている例

・鉄鋼;1900年には50MJ/kg, 2010年には25MJ/kg

・アルミニウム;1950年に50 kWh/kg, 2010年に15kWh/kg

 

低品位でも採算がとれる例:銅

大量の鉱物資源を採掘するようになり鉱山の形態が変わってきた。例えば,かつての銅鉱山は坑道を掘って銅の含有量に富む鉱脈を追い続けて採掘していた。今はわずかしか銅が含まれない岩石を大量に崩(くず)してそこから銅をとりだしている。

くりかえすが,これが可能になったのは,製錬技術が進んだために鉱床単位当たりの銅含有量(品位,ひんい)が少なくても採算がとれるようになったからである。

 

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鉱山開発やリサイクルの問題

大規模鉱山のリスク

上記のように低品位鉱を大量に採掘するのが主流となってきた。その結果,大地に多くの負荷をかけ環境問題を引き起こしている。例えば,鉱山開発で地表の水の汚染をもたらす。あるいは水が枯れる。それによって住民は,移動を余儀なくされる。

現在あるいは将来の鉱物開発は,地域社会の理解が必要となる。

 

リサイクルとその限界

化石燃料と違い,金属は利用されてもなくならない。そこで金属を使った製品はリサイクル資源として再利用可能である。

実際には,リサイクル実施は経済的に限界がある。

現在は,十分な量の金属が使われている製品だけが,リサイクル可能である。ハイテクで使われるレアメタルは製品に少量しか使われていないので,現在はほとんどリサイクルされていない。

 

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3のまとめと今後の課題

地質の調査から,どこにどのくらいの資源があるか予測でき,確保できる資源量(埋蔵量,まいぞうりょう)を求めることができる。しかしながら調査結果の解析だけでは鉱物資源“開発”の将来はわからない。鉱山開発に伴う環境問題,世界規模での経済や国際関係,地球規模の気候変動まで考慮して開発を進める必要がある。

 

問2の回答例 2020年の値

ルクセンブルグ(11万7千ドル),スイス(8万7千ドル),アイルランド(8万5千ドル)

米国は6万3千ドル,日本は4万ドル。

1万ドル以下の国は,全体192国中の128国。

 

3の回答例

18世紀から19世紀,産業革命

1950年から1960年,石油の利用が拡大

 

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余力があれば次の付録に進んでください。

付録: 

e-Book:地球環境がよくわかる本

新しいエネルギーを使う計画,日本の電源の変化はどうなってきたのか。

https://elib.maruzen.co.jp/elib/html/Viewer/Id/3000047763?10

青空文庫 5分で読める短編小説

佐左木俊郎「狂馬」(初出:1931年,昭和6)

かつての日本の炭鉱のようすがわかります。馬で坑内の石炭を運び出していた。

https://www.aozora.gr.jp/cards/000134/files/46178_34799.html

 

動画:製鉄工程(ポハン製鉄所) (POSCO) 643

https://www.youtube.com/watch?v=DwiIzb9KNfQ

動画自然のエネルギーを使う「風力発電」(NHK)22

http://www2.nhk.or.jp/school/movie/clip.cgi?das_id=D0005300797_00000

 

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対面授業ができない場合の小課題

1 次の元素の記号を記す。

鉄,銅,金

2 それらの元素の用途に何があるか,簡単で良いから,それぞれ記す。

鉄,銅,金

3 質問や感想があれば自由に書く。

 

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以上