科学と人間社会U
日本の地質と鉱物資源 Geology and Mineral Resources in Japan 2024年8月30日版
日本は,古生代から新生代はじめ,付加体の形成や花こう岩の貫入があり,アジア大陸東縁で成長する。新生代後半に大陸から分離し,日本海が形成された。さらに列島の折れ曲がりなどを経て現在の形となる。現在の日本列島は,4つのプレートがまじわり火山活動や地震活動の多い場所となっている。日本列島は,地質構造上,東北日本と西南日本に分かれ,さらに西南日本は内帯と外帯に分かれる。
日本は現在では資源がないと言われているが,50年くらい前までは日本中に多くの鉱山があった。さらに江戸時代から明治・大正・昭和前半にかけ日本は世界有数の資源国だった。
近代化の中,日本の産業が発展して資源の多くを掘りつくし,今では多くの資源を輸入する国となっている。それでもある種の資源は今も採掘され一部は輸出されている。さらに,日本周辺の海底には未開発の有用資源がある。
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目次
1 日本の地質
2 日本の鉱物資源
3 日本の鉱山例
4 鉱毒事件
5 資源量と埋蔵量の考え方
6 揺れる大地 日本の地質災害予測 地震と火山
7 人が住むようになってからの日本列島の自然(気候)
参考 あおぞら文庫や動画の紹介
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要点
・日本列島は,西南日本と東北日本に大きく分けられ,さらに西南日本は内帯と外帯に分けられる。
・日本にはかつて多くの鉱山があり,銅やマンガン鉱床は,昭和の後半まで開発が行われていた。
・資源の多くを輸入するが,それでも,例えば,石灰石などは今でも採掘している。
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自習の能率をあげるため,本文中の小問をここにまとめる。復習に使うと良い。
問1 付加体とは何か。
(回答例を1のまとめの後に記す) →回答例
問2 石灰石鉱床分布図で,岐阜県,三重県,滋賀県にある鉱床の名前(地名)は何か。
日本の石灰石鉱床分布(石灰石鉱業協会より)
http://www.limestone.gr.jp/introduction/
(回答を2まとめの後に記す) →回答例
問3 付加体に伴う鉱床は何か。
(回答を2まとめの後に記す) →回答例
問4 日本の鉱山が閉山に追い込まれたのはなぜか?銅鉱山やマンガン鉱山の歴史から見てみる。
(回答例を3のまとめの後に記す) →回答例
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1 日本の地質
日本列島の地質が現在のようになるまでに多くの事件があった。それらのうち,付加体形成,花こう岩,日本海の形成に注目する。
古生代や中生代にプレートの沈み込みに伴う付加体形成や中生代後半に大規模な火成活動があった。それらが現在の日本列島の広い部分を占めている。 新生代中ごろ,日本は大陸から離れ,日本海が形成。同じころ伊豆・マリアナ島弧が日本に衝突する。
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1.1現在の日本列島
日本列島周辺のプレート
図の出典:全地連HP 日本の地質と地質環境
https://www.zenchiren.or.jp/tikei/plate.html
この図が語る日本列島の特徴は次の通りである。
・日本列島は4つのプレートが衝突している。
・日本列島は,4つのプレートがせめぎあう場で複雑な応力場に支配されている。
・プレート運動は島弧に強いひずみをあたえ,このため日本列島は,世界でも有数の地震多発帯かつ火山活動多発帯となっている。
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参考:
世界のプレート
出典はUSGSの自由利用可能イメージ
・地球表面の変動は,変形しにくい板であるプレートの動きで説明できる。
・日本付近は,4つのプレートが接する世界でも特異な場所であることがわかる。
地震の種類 プレート境界部付近では地震が頻繁に起きる。プレートに絡めて地震を説明する。
地震本部の説明画像
https://www.static.jishin.go.jp/resource/figure/figure001005.jpg
海溝型の地震
陸側のプレートに海側のプレートが毎年数cmもぐり込んでいる。そのとき陸側のプレートが引きずり込まれプレート同士の境目にひずみが蓄積する。それが限界に達したとき,もとに戻ろうと動き地震が発生する。
例 2011年 東日本震災(東北地方太平洋沖地震)
活断層による地震
陸側のプレートに蓄積されたひずみのエネルギーがプレートの内部で破壊を引き起こし断層ができて地震が発生する。この断層(活断()に大きな力が加わると,再び破壊されて地震が発生する。
例 1995年 阪神・淡路大震災(兵庫県南部地震)
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1.2 日本列島の地質区分
糸魚川静岡構造線あるいは棚倉(たなくら)構造線を境に,日本列島は大きく西南日本と東北日本に分けられ,西南日本は中央構造線を境に内帯と外帯に分けられる。さらに,ある地質のまとまりに代表的な地名を付して「〜帯」と称して地質区分を行う。
西南日本の地質区分 (原図は山口大学HP)
上図からわかるように中部地方の基盤地質構造区分は北から南に次のようになる。
飛騨帯(ひだたい)(赤色):4億年より前の大陸地殻
飛騨外縁帯(ひだがいえんたい)(緑色):約3億年前(古生代〜中生代三畳紀)の付加体
美濃‐丹波帯(みのたんばたい)(青緑色):2-1億年前(中生代ジュラ紀)の付加体
領家変成帯(りょうけへんせいたい)(桃色): 1億年前(白亜紀)の高温低圧変成帯(もとはジュラ紀の付加体)
--- 中央構造線(ちゅうおうこうぞうせん) ---
三波川変成帯(さんばがわへんせいたい)(紫色):1億年前(白亜紀)の低温高圧変成帯(もとはジュラ紀の付加体)
秩父帯(ちちぶたい)(青緑色):2-1億年前(中生代ジュラ紀)の付加体
四万十帯(しまんとたい)(黄色):1-0.25億年前(中生代白亜紀〜新生代古第三紀)の付加体
※これらの基盤地質構造区分に火成岩が貫入し,新しい堆積物が重なる。
参考サイト:大鹿村中央構造線博物館HP
日本列島の骨組み
https://mtl-muse.com/mtl/aboutmtl/tectnic-lines/
このHPの最初の図で日本の地質構造の概略がわかる。東北日本と西南日本,さらに西南日本は内帯と外帯に分けられる。
基盤区分の例
・美濃帯(美濃-丹波帯)は,愛知県北部から岐阜県南部に分布する。木曽川沿いで良く観察できる。
・領家変成帯は,愛知県南部から三重県北部に分布する。三重県の青山高原で良く観察できる。
調和的花こう岩質脈(G)を伴う砂岩泥岩起源変成岩(上野図幅より,高橋撮影)
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1.3 付加体(ふかたい)
日本列島の地質の基本(土台)は,上記のように地名をつけて〇〇帯と分けるが,それらの多くは,古生代から新生代にわたり形成された付加体が帯状に配列したもの。付加体とは,海洋プレートが海溝で大陸プレートの下に沈み込む際に,海洋プレート上の堆積物がはぎ取られ,陸側に付加したもの。
付加体概念(ふかたいがいねん) (ウィキペディアより)
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/5/53/USGS_Visual_Glossary-Accretionary_wedge.gif
海洋プレートが大陸に沈み込む際にはぎとられた地質体が大陸に加わる。
付加体のうちでも中生代に形成された付加体は日本列島に連続して広く分布している。
古生代後期(ペルム紀)の海山((灰岩/玄武岩),中生代前期(三畳紀)のチャート,中生代半ば(ジュラ紀)の珪質泥岩,砂岩泥岩互層がプレート上で順に重なり大陸のへりに付加する。
身近な例
木曽川沿いでは美濃帯の付加体堆積物を観察できる。特に鵜沼や桃太郎神社の川岸ではくわしく観察できる。
鵜沼の層状チャート(聖徳学園 川上研究室より)
http://www.ha.shotoku.ac.jp/~kawa/kawa/seminar/74.html
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1.4 白亜紀の火成岩
日本では,花こう岩は,国土全面積の約13%を占めている。その大部分は中生代後期(白亜紀)のもので新生代前期(古第三紀)に引き続く。花こう岩とともにりゅうもん岩の大規模な噴出が中国地方や中部地方に起こっている。
白亜紀花こう岩 愛知県岩巣山(高橋撮影)
海洋プレートが他のプレートの下に沈み込んでいる場所を「沈み込み帯」という。この沈み込み帯でマグマ発生する。地表で噴き出し火山となり,地下で固結して深成岩(花こう岩など)になる。
沈み込み帯のマグマ発生のモデル(大(村中央構造線博物館HPより)
https://mtl-muse.com/study/kashio-spring/magma2/
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1.5 日本海の形成
新生代中ごろ,日本列島は大陸から離れ,日本海を形成する。現代に通じる列島の時代となる。簡単にまとめると次の通り。
・2500万年前頃から大陸の縁辺が大陸から離れ,日本海が形成。
・日本海の形成に伴い,火成活動が起こる。
・列島は1500万年前に折れ曲がる。
日本海形成のようす(ウィキペディアより)
・2300万年前から1800万年前(中新世前期),沈み込み帯により大陸縁の分離が活発化する。
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/a2/Sea_of_Japan_Early_Miocene_map.svg
・350万年前から200万年前(鮮新世後期‐更新世前期),日本海の拡大は終息して現在の配置に近くなる。
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/f/fd/Sea_of_Japan_Pliocene_map.svg
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1.6フォッサマグナの形成
日本列島の真ん中あたりに「大きな溝(みぞ)がある。ナウマンはこれをフォッサマグナ((テン語で「大きな溝」の意)と名づけた。日本列島がアジア大陸から離れるときにできた大地の裂け目((けめ)と考えられている。
糸魚川静岡構造線は,東北日本と西南日本を分ける断層であり,フォッサマグナの西側の境界断層である。北アメリカプレートとユーラシアプレートの境界でもある。
フォッサマグナ(ウィキペディアより)
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d2/Tectonic_map_of_southwest_Japan.png
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問1
付加体とは何か。
(回答例は1のまとめの後に記す)
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1 のまとめ
日本のなりたちで主要なできごとは,付加体形成と日本海の形成である。
中部地方の基盤の地質構造区分は,北から飛騨帯(4億年より前の大陸地殻),飛騨外縁帯(約3億年前の付加体),美濃‐丹波帯(2-1億年前の付加体),領家変成帯(1億年前の高温低圧変成帯),中央構造線,三波川変成帯(1億年前の低温高圧変成帯),秩父帯(2-1億年前の付加体),四万十帯(1-0.25億年前の付加体)となる。
新生代中ごろに日本列島は,大陸から分裂し日本海が形成した。
問1の回答例
海洋プレートが海溝で大陸プレートの下に沈み込む際に,海洋プレート上の堆積物がはぎ取られ,陸側に付加したもの。
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2 日本の鉱物資源
現在では,日本には資源がなく,輸入に頼らなくてはならないと言われている。しかしながら,かつて,日本は資源大国であった。また,現在でもある種の資源は日本で採掘されている。
2.1 日本列島の鉱物資源概略
日本列島の生い立ちを振り返り,それに沿い鉱物資源がどのように形成したかを記す。
・5億年前以降しばらく活動的大陸縁の時代
・3億年前から2億年前 大陸衝突(南中国・北中国)
このころ,サンゴ礁などを基とするできた石灰岩形成(セメントの材料となる石灰石鉱床)
・2億年前から2500万年前:活動的大陸縁の時代
1億5000万年前ごろの付加体形成と海洋の温度の変化に伴いマンガンや銅鉱床が形成
・2500万年前から現在:島弧時代(日本海の形成)
日本海形成とそれに関連する火山活動で銅鉛亜鉛鉱床(黒鉱)が形成
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2.2 石灰石(せっかいせき)
古生代後半に生息していた石灰質の生物が化石化して石灰岩となった。これらの岩石はサンゴや有孔虫などの化石を多く含む。
日本の石灰石鉱床分布(石灰石鉱業協会より)
http://www.limestone.gr.jp/introduction/
石灰石鉱床をまとめると次のようになる。
・非金属鉱床の代表,日本が自給できる資源。
・岩石名は石灰岩だが,資源としては石灰石と言うことが多い。
・主にセメント材料となる。そのほか鉄鋼で鉄鉱石から不純物を取り除くことに利用。
問2
石灰石鉱床分布図で,岐阜県,三重県,滋賀県にある鉱床の名前(地名)は何か。
回答は2まとめの後に記す。
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2.3 中生代の付加体に関連する鉱床
付加体には海底で生成したさまざまな鉱床ができている。Mn(マンガン)酸化物鉱床は,秩父帯や美濃丹波帯に分布する。別子型Cu(銅)硫化物鉱床は,三波川帯や四万十帯に分布する。これらはその時代の地質の条件が重なってできたものと考えられる。
付加体中の鉱床分布(地質学会より)
http://www.geosociety.jp/uploads/fckeditor//outline/2018award/2018_Nozaki.jpg
この図中の鉱床はどのようにして形成されたか,最近の考えを以下に記す。
銅鉱床の形成
・海底火山活動が盛んで銅が供給,
・中生代半ば(ジュラ紀)のある時期,温暖化で冷たい海水が深海まで流れてこなく深海の海水はよどんで酸素が乏しくなった,
・その結果,深海の銅は硫化物となって固定。
銅鉱床の鉱石は,銅に硫黄(いおう)(S)がついた硫化物(りゅうかぶつ)である。
例:黄銅鉱(おうどうこう)
Chalcopyrite CuFeS5, 斑銅鉱(はんどうこう)Bornite
Cu5FeS4
マンガン鉱床の形成
中生代半ばすぎのジュラ紀後期に海水が温暖から寒冷になり,海底に酸素が増えてマンガン鉱床ができた。
・熱水からマンガンがもたらされる。
・ジュラ紀の温暖な時期,海水は酸素に乏しくなり,嫌気性の環境でよどんだ海水にマンガンが溶けこむ。
・温暖化が終わり,冷たい海水が深海に流れ込むようになると酸素がもたらされ,マンガンが酸化物として固定する。
マンガン鉱床の鉱石は,マンガンに酸素(O)がついた酸化物である。
例:ハウスマン鉱 Mn2+Mn3+O4 菱マンガン鉱Rhodochrosite
MnCO3
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参考:
ジュラ紀後期と現在の比較
現在とくらべてジュラ紀後期は温暖で海水の様子が今とは違っていた。このことが鉱床の形成に関係がある。
・現在は氷床があり,冷たい海水が深海にもたらされる。CO2濃度が小さく,酸化的。
・ジュラ紀後期には氷床がなく,そのため冷たい海水が深海にもたらされることがなく,海水はよどんでCO2濃度が高く,嫌気(還元)的。
現在とジュラ紀後期の海洋環境の違い(地質学会より)
http://www.geosociety.jp/uploads/fckeditor//outline/2018award/2018_Nozaki03.jpg
現在は氷床があるが,ジュラ紀後期にはない。
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2.4 花こう岩にともなうモリブデンやタングステン
日本列島には中生代後期(白亜紀)から新生代前期(古第三紀)にかけた花こう岩や関連する火山岩が広く分布している。それらにはさまざまな鉱物資源をともなう。そのうち,モリブデンやタングステンに着目すると,西南日本のモリブデン鉱床は山陰に,タングステン鉱床は山陽に分布しているという違いがある。これらの地域に分布している花こう岩の性質の違いによると考えられている。花こう岩論争などとともに別章であらためてふれる。
西南日本のモリブデン鉱床区(Mo
province)とタングステン鉱床区(W
province)
http://y95480.g1.xrea.com/nue_8_4.jpg
(石原2002,地調研報,vol.53,p.657-672より)
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2.5 黒鉱(くろこう)
秋田県など東北日本の銅-鉛‐亜鉛鉱山は黒鉱という鉱床である。新生代半ば(新第三紀はじめ)の日本海形成に伴う火山活動に関連すると考えられている。特徴を列記すると次のようになる。
・マグマに関連した鉱床。
・黒鉱は熱水噴出による鉱物が沈殿したもの。
・主に東北の日本海側に分布する新生代半ば以降(新第三紀)の銅・鉛・亜鉛の鉱床。
・黒鉱に関係した火成活動は日本海形成に伴う。
黒鉱の分布(ウィキペディアより)
小坂鉱山,1930年ごろ,(ウィキペディアより)
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/9/96/Kosaka_Mine_in_1930s.jpg
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2.6 海底資源
日本近辺の海底には,金,銀,銅,亜鉛,鉛,石油,コバルトリッチクラスト,メタンハイドレート等の豊富なエネルギー資源や鉱物資源の存在が確認されている。2020年代末に商業化の可能性可否決定をめざして調査や採取技術開発が進められている。
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/shared/img/qnf6-2fdw57mz.png
日本近海の資源一覧(資源エネルギー庁より)
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問3
付加体に伴う鉱床は何か。
回答は2まとめの後に記す。
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2のまとめ
日本の鉱床は地域や時代により産出に特徴があるが,それは地質の性質による。例えば,中生代半ば(ジュラ紀)の付加体に伴う銅やマンガン鉱床は,当時の海の状態の変化によって金属が濃縮固定した。新生代半ばの日本海形成に伴う黒鉱は,当時の盛んな火成活動に関連して鉱床ができた。
問2の回答例:
赤坂,伊吹,藤原
鉱山名などは次の通り。
赤坂:岐阜県大垣市赤坂町 例,河合石灰鉱山,愛宕鉱山
伊吹:滋賀県米原市 例,伊吹鉱山
藤原:三重県いなべ市 例,藤原鉱山
問3の回答例:
マンガン鉱床や銅鉱床
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3 日本のかつての鉱山 Some abandoned mines in Japan
日本の鉱山開発の歴史として,銅鉱山とマンガン鉱山を紹介する。
主な日本の銅鉱山は次の3つである。
別子鉱山
1691-1973
足尾鉱山
1610-1973
日立鉱山
1861-1981
日本の金銀銅鉱山の位置図(石見鉱山おおだwebミュージアムHPより)
http://sanbesan.web.fc2.com/iwami_ginzan/mine_japan.html
別子鉱山,足尾鉱山,日立鉱山の場所を確認できる。
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18世紀の世界の産銅量 (JOGMEC, 2006)から日本が資源大国だったことがわかる。
当時の産銅量は次の通り。
・日本
(Japan 1716-1754) 2,240 t/year※1
・チリ
(Chile 1721-1740) 250 t/year ※2
・イギリス
(UK 1726-1754) 924 t/year ※3
・世界
(World 1726-1754) 2,586 t/year ※3
※1
葉賀七三男 (1990)
※2
EL COBRE CHILENO (1975)
※3
World –Ferrous Metal Production and Prices (1700-1976)
18世紀中ごろ,世界の銅生産のほとんどを日本が占めている。ここにあげた世界の銅生産量はイギリス中心の情報なので,日本の生産量が十分統計に反映していない。
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足尾鉱山(あしおこうざん)の歴史
日本の3大銅鉱山の一つ,足尾鉱山について説明してみる。栃木県にあり,日光に近い。
・鉱床の種類は,新生代半ばすぎ(新第三紀)の熱水鉱脈鉱床。
鉱山の歴史は以下のようになる。
・江戸時代
1610
足尾銅山開山
1661-1687
銅山最盛期
・戦前
1877
古河市兵衛が経営に携わる(後の古河鉱業)
1884
銅生産量日本一
1890
鉱毒被害深刻(参照 4鉱毒事件)
1895年の足尾銅山(ウィキペディアより)
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/b/b5/Ashio_Copper_Mine_circa_1895.JPG
・戦後
1961
貿易自由化で鉱山経営難に
1973
閉山
・閉山後
1980
足尾銅山観光オープン
2007
産業遺産に
現在,足尾鉱山は観光施設となっている。
かつての鉱山の坑道の一部に入ることができる。全長700mの坑内は400年の歴史が息づく博物館とである。
足尾鉱山坑口(ウィキペディアより)
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/5/5b/Ashio_copper_mine_tsudoukou.JPG
この坑口から観光トロッコで入坑できる。
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日本のマンガン鉱山
かつて日本中でマンガンを採掘していた。広渡((980)からその歴史を紹介する。
参考文献:広渡(1980):岩石鉱物鉱床学会誌,特別号2号,151-164。
・19世紀中ごろ,マンガン鉱注目,染料,薬品,ガラス着色,乾電池に利用。
・19世紀末から20世紀初期,製鉄や製鋼に用いられるようなる。
・第1次大戦勃発,急速に鉄鋼業の発展を促進。
・1920-1924年,苦難の時代
・1931年満州事変から1944年第2次大戦頃はマンガン鉱業の黄金時代。
・1943,1944年に年産34-35万トン。
・1945-1948年,低調。
・1950年,朝鮮動乱で鉄鋼業需要がありマンガン鉱業活気をとりもどす。
・1958-1959年,再び年産35万トン,第2次黄金時代。
・1960年代,貿易自由化で国内圧迫,生産伸び悩む。鉄鋼業界増産でかろうじて支えられる。
・1973年オイルショック,鉱山の閉山あいつぐ。
・現在見学できるマンガン鉱山:
岩手県の野田玉川鉱山は観光鉱山として公開(マリンローズパーク野田玉川)。
京都,新大谷鉱山は,丹波マンガン記念館として坑道も見学できる。
マンガン鉱石の例
軟マンガン鉱(ウィキペディアより)
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/9/9d/PyrolusiteUSGOV.jpg
菱マンガン鉱(ウィキペディアより)
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/7/78/Rhodochrosite.jpg
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最近のマンガン事情 (JOGMEC 2020)
マンガンの最近の用途や生産国を説明する。
マンガンの用途は次の通り。
・需要の97% は,マンガン鋼の原料やフェロマンガンとして 鋼材の脱酸・脱硫に用いられる。
・その他は,マンガン電池やリチウム電池の正極,アルミ飲料缶,合金にしてフェライト磁石に使われる。過マンガン酸カリウムは,分析試薬,有機合成,殺菌,火薬,医薬品に用いられる。
生産国(2019年) は次の通り。単位マテリアル千トン
中国 34,154
南アフリカ 17,009
オーストラリア 6,089
ガーナ 4,908
ガボン 4,766
他
合計 79,396
現在,日本はマンガンを輸入に頼っている。わが国の鉱石輸入相手国と輸入量は次の通り(2019年)。 単位純分千トン
南アフリカ 322.5
オーストラリア 106.0
ガボン 28.4
他
合計 457.1
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銅鉱山を祖とする非鉄金属業界の例
日本の3大銅鉱山は,別子鉱山,日立鉱山,足尾鉱山。これらの鉱山から発展して現在,それぞれ住友金属鉱山,JX金属,古河電気工業という日本を代表する非鉄金属企業となっている。
住友金属鉱山
1590(天正8)年,京都で蘇我理右衛門(そがりえもん)が銅精錬業を開業
1691(元禄4)年,別子銅山操業開始
この鉱山事業をルーツとして住友重機械工業,住友林業,住友化学など住友グループの事業・企業群が生まれる。
現在国内唯一の商業ベースの金鉱山の菱刈鉱山を開発操業。
JX金属
1905(明治38)年,久原房之介(くはらふさのすけ)が茨城県の赤沢鉱山を買収し,日立鉱山と改称し開業。
久原鉱業から日本鉱業へ,日鉄金属が分離独立後,日本鉱業は共同石油と合併し日鉱共石,新日本ホールディングス,JXホールディングスなどを経てJX金属。
古河電気工業
古河市兵衛が1875(明治8)年に新潟県草倉銅山,1877年に栃木県足尾銅山を買い取る。
1884年,銅精錬開始。同じ年に山田電線製造所が開設され,古河電工の創業の年となっている。
古河電工をルーツとする会社多数。横浜ゴム,富士電機製造,富士通,日本軽金属など。富士の名称は古河の「ふ」,富士電機製造時の合弁会社ドイツのジーメンス社の「じ」にちなむ。
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問4
日本の鉱山が閉山に追い込まれたのはなぜか?銅鉱山やマンガン鉱山の歴史から見てみる。
(回答例:3のまとめの後に記す)
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3のまとめ
日本のかつての鉱山
銅をはじめ,多くの鉱種を対象に鉱山が開発されてきた。多くは閉山したが,一部は足尾鉱山などのように今でも観光鉱山として見学できる。
問4の回答例
貿易自由化,オイルショック
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4鉱毒事件
銅鉱山は,近代日本の国力を向上させ,産業を支えてきた。しかしながら急速な開発は鉱毒をもたらした。山野を荒廃させ,人々の健康をむしばんだ。
足尾鉱毒事件(あしおこうどくじけん)または足尾銅山鉱毒事件(あしおどうざんこうどくじけん)
19世紀後半の明治時代初期から栃木県と群馬県の渡良瀬川周辺で起きた,日本初の公害事件である。足尾銅山の開発により排煙,鉱毒ガス,鉱毒水などの有害物質が周辺環境に著しい影響をもたらし,1890年代より栃木の政治家であった田中正造が中心となり,国に問題提起するものの,加害者決定はされなかった。(ウィキペディアより)
田中正造の国会での質問と演説(抜粋)
亡國に至るを知らざれば之れ即ち亡國の儀に付質問(明治三十三年二月十七日,衆議院提出)
民を殺すは國家を殺すなり。法を蔑(ないがしろ)にするは國家を蔑にするなり。
皆自ら國を毀(こぼ)つなり。
財用を濫(みだ)り民を殺し法を亂(みだ)して而して亡びざる國なし。之を奈何。
右質問に及候也。
演説(明治三十三年二月十七日,衆議院に於て) 抜粋
今日の質問は,亡國に至つて居る,我日本が亡國に至つて居る,政府があると思ふと違ふのである,國があると思ふと違ふのである,國家があると思ふと違ふのである,是が政府にわからなければ則ち亡國に至つた。之を知らずに居る人,己の愚を知れば則ち愚にあらず,己の愚なることを知らなければ是が眞の愚である。
簡單に歴史を申上げますると,此の鑛毒の流れ始まつたのは明治十二年からです。足尾銅山に製銅の機械を据えつけたのが十二年。十三年から毒が流れたのを栃木縣知事が見付けて,十三年十四年十五年と此の鑛毒の事を八釜しく言ふと,此の藤川爲親(ためちか)と云ふ知事がたちまち島根縣へ放逐されたのが,政府が鑛毒に干渉した手始である,古い事でございます。
此の藤川爲親と云ふ者が放り出されると,其後の知事は,最早鑛毒と云ふことは願書に書いてはならない,官吏は口に言つてはならない,鑛毒と云ふ事は言つてはならないと云ふことにしてしまつた。其れが爲に無心な人民は十年鑛毒を知らずに居たが,二十三年に至て不毛の地が出來たについて,非常に驚ひて始めて騷ぎ出した。其は明治二十三年からでございます。
關東の眞中へ一大沙漠地を造られて平氣で居る病氣の人間が,殺されないやうにして呉れいと言ふ請願人を,政府が打ち殺すと云ふ擧動に出でたる以上は,最早自ら守るの外は無い。一本の兵器も持つて居ない人民に,サーベルを持つて切つて掛り,逃げる者を追ふと云ふに至つては如何である。是を亡國で無い,日本は天下泰平だと思つて居るのであるか。
今日の質問は,左樣な國情中の一つである所の鑛毒事件である。今日政府は安閑として,日本は何時までも太平無事で居るやうな心持をして居る。是が心得が違ふといふのだ。一體如何いふ量見で居るのであるか,是が私の質問の要點でございます。
政府答辯書(明治三十三年二月廿一日,衆議院提出)
質問の旨趣其要領を得ず,依て答辯せず。内閣總理大臣 山縣有朋
(底本:「田中正造之生涯」國民圖書,1928(昭和3)年8月20日発行) 青空文庫より
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5資源量と埋蔵量の考え方
日本は,15世紀ごろには世界最大の銀生産国,19世紀ごろは世界有数の銅生産国,現在は資源小国で資源を海外に依存する。資源として採掘されるとは,どういうことか。ここで言葉を整理する。
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資源量(Resources): 経済対象となる有用物の量。
埋蔵量(Reserves): 経済性があり,確認できている資源量。
例えば,
銅の資源量:確認できている資源量は21億トン,地質からあるだろうと推定・仮定できるが未発見の資源量は35億トン
銅の埋蔵量(2021):8億8000万トン,生産量は2100万トン/年
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資源量と埋蔵量の体系的分類 (米国地質調査所・鉱山局,1980)
資源量分類を体系化して埋蔵量を明確にする。
横軸に「地質学的確かさ」,縦軸に「経済性」をとって定義する。
横軸:左へ「地質学的確かさ」が高くなる。
縦軸:上へ「経済性」が高くなる。
地質学的確かさ:実際の調査からどこにどのくらい資源があるかを確かめている。それに基づいて,その延長を予測していく。
経済性:資源を採掘するのに経済的に成り立つかどうか。鉱物の価格,施設費,人件費あらには採掘後の環境対策費などを考慮する。
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(既知資源量 Identified
resources) (潜在資源量 Undiscovered
resources)
累積生産量Accumulative production |
確認 Demonstrated 確実あるいは連続性想定 精測Measured --- 概測Indicated |
予測 Inferred 地質の延長から予想 |
確度 Probability 期待 仮定Hypothetical - 推測Speculative |
経済的 Economic |
埋蔵鉱量 Reserves |
予測埋蔵鉱量 Inferred reserves |
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准経済的 Marginally economic |
准埋蔵鉱量 Marginal reserves |
予測准埋蔵鉱量 Inferred marginal reserves |
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経済限界下 Subeconomic |
確認経済限界下資源量 Demonstrated subeconomic resources |
予測経済限界下資源量 Inferred subeconomic resources |
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6揺れる大地―予想される日本の地質災害
参考文献:鎌田浩毅(2022)「揺れる大地を賢く生きる」角川新書,287p
2011年3月11日の東日本大震災以来,日本では地震が頻繁に発生するようになった。火山の噴火も増えている。
想定される大規模地震と活断層位置図(内閣府,防災情報)
https://www.bousai.go.jp/kyoiku/hokenkyousai/jishin.html
マグニチュード7から9の想定される大規模地震
マグニチュード
地震のエネルギーで,数値が1大きくなると放出されるエネルギーは32倍となる。東日本大震災(「3.11」)はマグニチュード9.0を記録した。約100年前の関東大震災のマグニチュードは7.9で「3.11」はその約50倍,1995年の阪神淡路大震災は7.3で「3.11」はその1400倍のエネルギーが放出された。
地震は大きく分けると2つのタイプに大きく分けられる。1つは,海底が震源となる「海の地震」,もう1つは陸地の地下が震源となる「陸の地震」である。
例えば,東日本大震災や関東大震災は,海に震源があったので「海の地震」,1995年の阪神淡路大震災や2016年の熊本地震は,陸に震源があったので「陸の地震」に分類される。
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地震のメカニズム(内閣府,防災情報)
https://www.bousai.go.jp/kohou/kouhoubousai/h21/05/special_02.html
海溝型地震
太平洋側の海底にはプレートと呼ばれる厚い岩板があり,太平洋側から日本列島に押し寄せてくる。日本列島に直接ぶつからず斜め下に沈む。日本列島のほうも引きずられて沈む。しばらく力に耐えながら沈むが沈むのにも限界があり,もとに戻ろうとはねかえる。このはねかえりがいわゆる「海の地震」のしくみ,海溝型地震である。
活断層型地震
活断層が動くことで発生する。活断層とは,何年かの周期で繰り返し動いている断層,今も活動している「活(い)きた断層」ということから活断層と名づけられる。
活断層はどのようにしてできるか。海のプレートが押し寄せ列島の内陸にストレスがかかる。そのストレスにより陸地の弱い部分の岩石が割れ地震が発生する。その後,岩盤に新たに力が加わるとどの断層が動いて再び地震が起きる。このようにいちどできた断層は,次の地震の震源になっていく。このように繰り返し動いている断層を,未来まで活動するという意味で活断層と呼ぶ。
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予想される南海トラフ巨大地震(2035年±5年)
周期性からの予測
過去1400年間を見ると,南海トラフでは約100〜200年の間隔で蓄積されたひずみを解放する大地震が発生している。大地震の発生場所近年では,昭和東南海地震(1944年),昭和南海地震(1946年)がこれに当たる。昭和東南海地震及び昭和南海地震が起きてから70年近くが経過しており,南海トラフにおける次の大地震発生の可能性が高まってきている。
過去に南海トラフで発生した大地震(地震本部)
https://www.static.jishin.go.jp/resource/regional_seismicity/kaiko/k_nankai_kako.gif
地震活動の統計モデルから予測すると次の大地震の発生は2038年ごろとなる
土地の隆起からの予測
南海地震は「海の地震」(海溝型地震)で地震がおきると土地が隆起する,地震後には地盤沈下がゆっくり始まる。隆起前の土地にもどると次の地震の発生が予測される。
隆起量モデルによる南海トラフ巨大地震の予測(ウィキペディアより)
室津港の隆起量:宝永(1707年)1.8m,安政(1854年)1.2m,昭和(1946年)1.15m隆起
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火山災害
海溝型の巨大地震が発生した場合,数ヶ月から数年以内に活火山の噴火を誘発することがある。
日本国内には,富士山を含めて火山が250あるが,そのうち111の火山に1万年前よりあたらしい噴火の証拠があった。活火山である。
日本の火山(産総研)
https://gbank.gsj.jp/volcano/Quat_Vol/act_map.html
世界の火山(内閣府,防災情報)
https://www.bousai.go.jp/kazan/taisaku/k101.htm
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火山被害
東日本大震災以後に活動が増した火山が増えている。20ある噴火スタンバイの火山の中でもっとも心配される火山の筆頭は富士山である。富士山噴火により予想される被害は,火山灰,溶岩流,噴石と火山弾,火砕流・火砕サージ,泥流である。
火山灰
火山灰の実態は軽石や岩石が砕かれたもので炭が燃え残った灰とは異なる。火山灰の多くを占めるガラスは,化学的な毒性がなくても,角がとがったガラスで気管や肺を傷つけ人体に有害である。ライフラインにも被害を与える。電子機器に吸い込まれ,コンピューターの誤作動を起こしかねない。
溶岩流
1000〜1300℃もあるマグマが液体のままで地表に流れ出る。
噴石と火山弾
火山が噴火するときに火口から放たれる岩の塊が「噴石」と「火山弾」である。違いは,「火山弾」の方はマグマがまだ柔らかく様々な形状に変化する。
火砕流・火砕サージ
火砕流とは,マグマの破片や石片,ガスなどさまざまな物質が一緒に流れる現象。高速・高温のきわめて危険な流れである。火砕サージとは,高温の砂嵐のような現象。火砕サージの堆積物は火砕流と比較すると薄い。
泥流
泥流とは水とともに土砂が斜面を流れ下る現象。積雪の時季に噴火が起これば,急激に融かされた山頂の雪により泥流が発生することがある。
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参考資料
青空文庫:宮沢賢治
「泉ある家」
https://www.aozora.gr.jp/cards/000081/files/45652_35908.html
動画:みね秋吉台ジオパークの紹介,2分26秒。石灰岩(秋(台),石炭(大嶺炭田),銅(長登鉱山)など。
https://www.youtube.com/watch?v=UiukAyhv81s
動画:naori,
3分28秒。愛知県東栄町のセリサイト鉱山やセリサイトから化粧品を作るようすなど。
https://naori-toei.jp/about.html
活断層アエラ記事(アエラ2023.3.6号)
「全活断層を警戒すべき,どこで起きてもおかしくない」
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7 人が住むようになってからの日本列島の自然(気候)
参考文献:佐野・矢部・齋藤「日本の気候変動5000万年」,ブルーバックス。
人類の渡来
・第四紀になって寒冷な気候となり海水準が低下,渡海が容易になった。人類の渡来には3ルートが考えられている。
・津軽ルート(25000年前),対馬ルート(38000年前),沖縄ルート(35000‐30000年前)
最終氷期25000年前
・氷床や氷河が発達,海水準低下,黒潮停滞。夏季モンスーン弱まる,太平洋岸は乾燥。
・対馬暖流停止,日本海沿岸も乾燥。
・ナウマンゾウは寒冷化で日本に渡っていた。寒冷化が進み,28000‐27000年前に絶滅した。
縄文時代
・最終氷期後,温暖化するが,ヤンガー・ドリアス期(13000‐12000年前)で一旦寒のもどりがある。
・その後(11700年前)に気温が急上昇,完新世のはじまりである。
・農業が始まり,文明化する。縄文時代である。現在の日本の気候が完成し,夏や冬のモンスーンがあらわれ,梅雨も発生。
日本史のなかの気候変動
気候の推定に古文書が利用できるようになる。桜開花,飢饉,一揆の記録が参考となる。木の年輪も有効な資料である。
・弥生時代から飛鳥時代は寒冷。
・平安時代は中世温暖期。
・戦国時代から江戸時代は小氷期で寒冷,飢饉が多かった。
江戸時代の寒冷化は太陽活動度低下で宇宙線量の増加の時期(マウンダー期)であった。火山活動の影響もあった。1783年にアイスランドのラキ火山,グリムスヴォトン火山の噴火,それに浅間山大噴火があった。噴火により多量の塵(エアゾル)が漂い太陽光をさえぎった。
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飛鳥奈良 |
平安 |
鎌倉 |
室町 |
戦国 |
江戸 |
明治 |
温暖 |
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冷涼 |
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寒冷 |
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参考:源氏物語若紫の一部
「源氏が“わらわやみ”をおわずらいになって,いろいろまじないや加持をなさいますけれども,その効き目がなくて,たびたびの発作になやんでいらっしゃいますと,・・・」
わらわやみはマラリアだと考えられている。平安時代はマラリア蚊が生息するほど温暖だった。
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遠隔授業の課題例
1.美濃帯(あるいは美濃‐丹波帯)で,昭和30-40年代まで多くの鉱山から採掘されていた金属資源は次の元素のどれか。
白金,マンガン,ニッケル
2.その金属資源の用途は何か。
3.全体を通して質問や感想があれば自由に書いてください。
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以下余白