地球の仲間 (2024年8月30日版)
その1
1 惑星
2 隕石
3 地球の運動
参考 E-bookや動画の紹介
その2
4惑星の運動
5ケプラーの法則
6天体の距離
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その1 要点
・惑星は,太陽から近い順に,小型岩石惑星(地球型),巨大ガス惑星(木星型),中型氷惑星(海王星型)に分けられる
・隕石は,固体物質が地球に突入して地表に落下したもの
・地球の自転でみかけの力(コリオリの力,転向力)がはたらく
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本文中の問いをはじめにまとめておく
問1 地球になぜ海があり,生命に満ちあふれているのか。
(回答を1のまとめの下に記す) → 回答例へリンク
問2 惑星の中で半径が一番大きなものは何か。
(回答を1のまとめの下に記す)
→ 回答例へリンク
問3 隕石を科学的に研究する意義は何か。
(回答を2のまとめの下に記す)
→ 回答例へリンク
問4 おおいぬ座α星(シリウス)は,年周視差が0.379秒である。距離は何光年か。
(回答を3のまとめの下に記す)
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1惑星 Planet
太陽系は太陽とその周りを運動している惑星,小惑星,太陽系外縁天体,衛星,彗星,塵(ちり)などからなる。このうち,惑星は,岩石から主になる地球型惑星とガスの割合が多い木星型惑星に分けられる。
惑星は,月とともに都会でも見ることができる天体である。この身近な惑星の基本情報を整理してみる。
惑星の大きさ比較(ウィキペディアより)
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/c/cb/Planets2013.svg
この図の左が太陽で,それより順に水星(Mercury),金星(Venus),地球(Earth),火星Mars),木星(Jupiter),土星(Saturn),天王星(Uranus),海王星(Neptune)。
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地球型惑星(小型岩石惑星)
岩石を主成分とし,半径や質量が小さく,密度が大きい。水星,金星,地球,火星である。
水星
一番小さく,太陽に最も近い惑星。表面温度は太陽側で約400℃,反対側で約-200℃。
太陽からの距離(AU,天文単位)0.3871
注:AU(天文単位)は,地球と太陽の距離を1とする単位。
公転周期(年)0.2409
自転周期(日)58.65
赤道半径(km)2440
質量(kg)3.302 x 10(23乗)
平均密度(g/立方cm)5.43
衛星の数0
金星
二酸化炭素からなる厚い大気におおわれ,大気圧は地表で約90気圧と非常に高い。
太陽からの距離(AU)0.7233
公転周期(年)0.6152
自転周期(日)243.02
赤道半径(km)6052
質量(kg)4.869x 10(24乗)
平均密度(g/立方cm)5.24
衛星の数0
地球
表面積の7割が海洋,生命に満ちあふれている。
太陽からの距離(AU)1.0000
公転周期(年)1.0000
自転周期(日)0.997
赤道半径(km)6378
質量(kg)5.974x 1024
平均密度(g/立方cm)5.52
衛星の数1
火星
直径は地球の半分,質量は地球の10分の1,地表が酸化鉄を多く含み赤く見える。
太陽からの距離(AU)1.5237
公転周期(年)1.8809
自転周期(日)1.026
赤道半径(km)3396
質量(kg)6.416 x 10(23乗)
平均密度(g/立方cm)3.93
衛星の数2
地球(左)と火星の比較(ウィキペディアより)
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/2/2a/Mars_Earth_Comparison.png
火星表面(ウィキペディアより)
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/5/5a/Mars_Viking_11h016.png
バイキング1号着陸地点付近(1975年)
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問1
地球になぜ海があり,生命に満ちあふれているのか。
(回答をまとめの下に記す) 回答例へリンク
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木星型惑星(大型ガス惑星)
ガスの割合が多く,半径や質量が大きく,密度が小さい。
木星
太陽系最大のガス惑星,中心に鉄や岩石,そのまわりに水素とヘリウムがまとう。
太陽からの距離(AU)
5.2026
公転周期(年)11.862
自転周期(日)0.414
赤道半径(km) 71492
質量(kg) 1.899 x 10(27乗)
平均密度(g/立方cm) 1.33
衛星の数 63以上
土星
密度が小さい。小望遠鏡でも見える環がある。
太陽からの距離(AU)
9.5549
公転周期(年)29.458
自転周期(日)0.444
赤道半径(km) 60268
質量(kg) 5.685 x 10(26乗)
平均密度(g/立方cm) 0.69
衛星の数 65以上
木星の模様(ウィキペディアより)
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/5/5a/Jupiter_by_Cassini-Huygens.jpg
土星の輪の見え方(ウィキペディアより)
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/c/c6/Saturnoppositions.jpg
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天王星型惑星(中型氷惑星)
天王星や海王星は木星型に入れることもあるが,木星や土星にくらべると小さく,地球型よりも大きいので最近は別のグループにすることがよくある。氷の割合が多い。
天王星
中心に岩石と氷からなる核を氷が包み,表面に水素とヘリウムの大気をまとう。自転軸が横倒し。
太陽からの距離(AU)
19.2184
公転周期(年) 84.022
自転周期(日) 0.718
赤道半径(km) 25559
質量(kg) 8.686 x 10(25乗)
平均密度(g/立方cm) 1.27
衛星の数 27以上
海王星
最遠の惑星,天王星と同様の内部構造と組成をもつ。
太陽からの距離(AU)
30.1104
公転周期(年) 164.774
自転周期(日) 0.671
赤道半径(km) 24764
質量(kg) 1.025 x 10(26乗)
平均密度(g/立方cm) 1.64
衛星の数 13以上
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地球と木星の内部構造の比較
地球の内部構造
・地殻 大陸地殻は30-50
kmで,花こう岩質岩石の上部地殻,玄武岩質岩石の下部地殻にわけられる。海洋地殻は玄武岩質岩石で厚さは5-10km。
・マントル 上部マントルはかんらん石や輝石からなるかんらん岩,下部マントルはそれらが高圧で安定な鉱物に変わっている。
・核 鉄とニッケルからなる。液体の外核,固体の内核に分けられる。
地球の内部構造(ウィキペディアより)
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/7/79/Earth-crust-cutaway-japanese.svg
木星の内部構造
・木星内部構造は,岩石質の中心核を厚い金属水素の層がおおっている。そのまわりを分子状の水素がとりかこんでいる。
・通常は気体である水素やヘリウムも木星の巨大な重力で押しつぶされ液体や金属になっている。
・ガス惑星というよりも巨大リキッド(液体)惑星というのが適当と言う人もいる。
木星の内部構造(ウィキペディアより,英語表記)
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/b/b5/Jupiter_diagram.svg
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チチウス-ボーデの法則
太陽系惑星の軌道長半径の規則性に関する経験則。物理的に根拠はないとされるが,天文学の歴史を考える上で興味深い。
・1766年ドイツのチチウスが発見したが注目されなかった。1772年にボーデが著作で紹介して有名になる。
a = 0.4 +
0.3 x 2n
ここでaは天文単位で測った惑星の軌道長半径,nは惑星の番号。
・当時知られていた惑星のすべてによく当てはまった。ただし水星については
“-∞”(マイナスの無限大,限りなくマイナス)を使った。
すなわち,水星n=-∞,金星n=0,地球n=1,火星n=2,木星n=4,土星n=5
n |
ボーデ式の値 |
距離(au, 天文単位) |
天体名 |
-∞ |
0.4 |
0.39 |
水星 |
0 |
0.7 |
0.72 |
金星 |
1 |
1.0 |
1.00 |
地球 |
2 |
1.6 |
1.52 |
火星 |
3 |
2.8 |
2.77 |
ケレス(1801年発見) |
4 |
5.2 |
5.20 |
木星 |
5 |
10.0 |
9.55 |
土星 |
6 |
19.6 |
19.22 |
天王星(1781年発見) |
7 |
38.8 |
30.11 39.44 |
海王星(1846年発見) 冥王星(1930年発見) |
ボーデの法則は未知の惑星の発見につながった
・1781年に天王星が発見。
n=6を使うと良く当てはまった。
・そこでn=3に相当する惑星があるのではと捜索された。
小惑星ケレスが見つかった。小さなものだったが,その軌道上に多くの小惑星があることがわかり,かつての一つの惑星の破片か小惑星帯かもしれないと考えられた。
この法則が天王星までの惑星でよくあったのは偶然によるところが大きい。ただ,惑星配置の傾向を簡単な数式で表したということは評価できる。
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問い2
惑星の中で半径が一番大きなものは何か。
(回答をまとめの下に記す)
回答例へリンク
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1のまとめ
惑星は,岩石を主にする地球型惑星とガスを主とする木星型惑星に分けられる。
問1
回答例
太陽からの距離と地球の大きさによる。
すなわち,
太陽からの距離は,液体の水(海洋)が存在できる温度を保つのに適していた。
地球は十分な大きさと質量をもっているため,大気や液体の水が地表に引き付けられ,宇宙空間に拡散しない。
大気による温室効果で地球の気温が生物に都合のよく保たれている。
補足
生物が生息できる環境をハビタルゾーンと言う。
ハビタルゾーン(ウィキペディアより)
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/61/Habitable_zone_-_HZ.png
恒星の大きさ(明るさ)で恒星からの距離が異なる。
どこかに地球のような環境の惑星があるか。
まずは太陽系以外の惑星を確認することから始まった。
1992年に初めて太陽以外の恒星で惑星を持つものが確認された。その後,観測精度があがり2021年初めまでに4000個を超える惑星が確認できている。
ハビタルゾーンにある惑星も見つかっている。ひょっとするとそこには多くの生物がいるかもしれない。
系外惑星発見個数(発見方法でグラフは色分けされている,ウィキペディアより)
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/f/fd/Confirmed_exoplanets_by_methods_EPE.svg
問2
回答例 木星
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2 隕石 Meteorite
隕石は,惑星間の小さな固体物質の天体が地球に突入し,燃えつきずに地表に落下したもの。金属鉄と岩石の割合により,鉄隕石,石質隕石,石質隕鉄に分類される。地上で入手できる地球外物質で,太陽系の起源や進化を調べる重要な試料である。
鉄隕石 (iron meteorite)
主に金属鉄(Fe-Ni合金)から成る隕石である。分化した天体の金属核に由来する。
ニッケル含有比と構造から,ヘキサヘドライト (hexahedrite) ,オクタヘドライト (octahedrite) ,アタキサイト
(ataxite) に大きく分けられる。
オクタヘドライトには,数百万年の時間スケールでの冷却によって生じるウィドマンシュテッテン構造が特徴的な模様として現れる。
大型の鉄隕石(ホバ隕石,ウィキペディアより)
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/2/28/The_Hoba_Meteorite_near_Grootfontein.jpg
ウィドマンシュテッテン構造(ウィキペディアより)
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/3/36/Widmanstatten_hand.jpg
石鉄隕石 (stony-iron
meteorite)
ほぼ等量のFe-Ni合金とけい酸塩鉱物から成る隕石である。分化した天体のマントルに由来する。
パラサイト (pallasite)
とメソシデライト (mesosiderite) に分類される。
石鉄隕石(ウィキペディアより)
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/5/5e/Inseki34.JPG
石質隕石 (stone meteorite)
主にけい酸塩鉱物から成る隕石である。
球粒状構造のコンドルール (chondrule)
があるコンドライト (chondrite) と,ないエイコンドライト (achondrite) に大きく分けられる。
コンドライト(ウィキペディアより)
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/3/3c/Chondrules_grassland_1.jpg
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問3
隕石を科学的に研究する意義は何か。
(回答をまとめの下に記す)
回答例へリンク
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南極隕石
南極大陸で大量の隕石が採集されている。
以下,吉田(2020,極地56巻1号)とウィキペディアから紹介する。
南極隕石略史
1966年の隕石カタログによるとそれまでに登録されていた隕石の総数は約2000個である。
1969年,日本の南極観測隊がやまと山脈近くの氷原で9個の隕石を見つけた。
1973年に12個を見つけた。
南極の山脈近くでは隕石が集積するらしいとなり,組織的に隕石探査・採集を行うこととなる。
1974年,初発見と同じ地域で663個の隕石が採集された。
この日本の成果から他国の南極観測隊でも隕石探査を行うようになった。
2021年段階で,採集された南極隕石は6万個を超える。
南極隕石調査(国立極地研究所)
https://www.nipr.ac.jp/jare-backnumber/research51/inseki.html
南極隕石氷河運搬集積機構
南極隕石は,南極横断山脈ややまと山脈など南極大陸にある山脈の,麓の裸氷帯で見つかることが多い。
隕石は山脈の麓によく落ちるということはなく,南極大陸全体に偏りなく落ちる。
氷河も氷床もゆっくりと川のようにより低い方へ流動し,隕石も一緒に移動する。
氷河のうち,山脈にぶつかったものは山脈を登る。上昇しきって氷面は,削剥・消耗・昇華する。
しかし含まれている隕石はそのまま氷の上に留まり,山脈付近に集合する。
隕石集積機構(ウィキペディアより)
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/c/ca/Icemvmt.png
南極隕石の意義
・個数が多数であることで隕石研究に重要な変革をもたらした。
氷上に集積した隕石が種類にかかわらずすべてが採集され,地球に落下する隕石の種類構成を知ることができる。
南極以外の地域では,鉄隕石は地上の岩石と際立って異なるので見つけやすい。ところが石質隕石は地上の岩石の中に紛れると隕石として認めにくく,地上に落下する隕石構成比に反映しにくい。南極では,氷原上にあるため,地上の岩石と似ていても隕石として見つけやすい。
・南極氷原に落下した隕石は,低温下で氷漬けになる。
このため,風化作用や汚染作用から免れるため,精密な化学研究を可能にする。
南極の裸氷状の南極隕石(ウィキペディアより)
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2のまとめ
隕石は惑星間の小さな固体物質が地球に突入し落下したもの。南極で大量に見つかっている。
問3
回答例
地上で入手できる地球外物質であり,太陽系の起源や進化を調べる上で重要な試料となる。
例えば,地球形成の復元には隕石の情報が大きく寄与している。
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3 地球の運動 Earth’s motion
私たちが住む地球は,1年で太陽の周りをまわり,自ら1日で一回転している。その当たり前のことをあらためて考えてみる。その運動を利用して恒星までの距離を測ることができる。
自転
コペルニクスの地動説が受け入れられるまでは,地球は動かず天球が回転しているとも考えられていた。どんな事実が,地球自転の証拠となるだろうか。
フーコーは1851年に振り子の実験を行った。振り子は初めに揺らした方向から,北半球では上から見て時計まわりに変化していく。振り子の振動面の下の地球が回転しているためである。南半球では反時計回りに回転し,赤道上では回転しない。
この変化は地球の自転で生じる見かけの力コリオリの力(転向力)がはたらくと考えることができる。台風はうずをまいているが,風が中心に向かって進む際にこの力がはたらいていることで説明できる。
フーコーの振り子。フーコーはここフランスパリのパンテオンで1851年に公開実験を行った(ウィキペディアより)
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/9/9c/Panth%C3%A9on_Pendule_de_Foucault2.JPG
北極点におけるフーコー振り子のシミュレーション(ウィキペディアより)
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/2/22/FoucaultGlobusAnima.gif
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公転
自転と同様に,コペルニクスの地動説が受け入れられるまでは,地球は動かず太陽が回転していると考えられていた。太陽の年周運動は,地球が太陽の周りをまわる公転による見かけの運動である。その証拠の一つは,年周視差である。
年周視差
巻き尺で測れないほど遠方にある物体までの距離は,長さがわかっている基線の両端からの角度(視差)から計算で求める(三角測量の原理)。
地球が太陽のまわりを公転しているならば,地球近くの恒星の見える方向ははるかに遠い恒星の配置に対して1年を周期として変化するはずである。基線として地球の公転半径(1天文単位)をとったときの視差をその恒星の年周視差(単位は秒)という。
年周視差(ウィキペディアより)
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/e/e3/Stellarparallax2.svg
この図で黄色が太陽,青が地球,中央のピンク色が恒星である。遠方の星(黒丸)に対して上のピンク色のように目的の恒星は動いて見える。年周視差をp (秒),目的とする恒星の距離をrとすると,pは微小なのでpとrは反比例すると考えてよい。
p=1(秒)の角度のとき,r=3.26光年になる。
恒星までの距離の単位には,光年やパーセク(pc)が使われる。1光年とは,光が1年間に進む距離,1パーセクとは,年周視差1秒に相当する距離で3.26光年となる。つまり,
r=1÷p(パーセク)=3.26÷p(光年)
例題
太陽に最も近いケンタウルス座α星は,年周視差が0.755秒である。
距離r(光年)=3.26÷0.755=4.3
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絶対等級
距離がわかると絶対等級がわかり,絶対等級がわかれば恒星の色(スペクトル)と組み合わせて,恒星の一生がわかる。
夜空に見える星の明るさは見かけの等級である。恒星の真の明るさを比較するため,地球から10パーセク(=32.6光年,年周視差0.1秒)においたときの明るさを絶対等級とした。恒星までの距離がわかると,星の絶対等級を求めることができる。
例題 距離326光年に見かけの等級が10.8等の恒星がある。この恒星の絶対等級は何等級か。
この恒星は,絶対等級の基準の10パーセク(32.6光年)に対して326÷32.6=10倍にある。
明るさは距離の二乗に反比例することが別にわかっているので,この恒星を10パーセクのところまで持ってくると,10の二乗,100倍となる。星の等級を定める際に5等級差は100倍とわかっているので,恒星の明るさは,10.8-5=5.8等となる。
太陽の絶対等級は4.8等,おおいぬ座のシリウスは1.5等である。
星の光を色の帯にわけたスペクトルと組み合わせることで星の一生がわかり,例えば,太陽の未来を推定できる。
ヘルツシュプング・ラッセル図 ウィキペディアより
H-R_diagram.png
(525×700) (wikimedia.org)
縦軸は絶対等級,横軸は表面温度(左が高く右が低い)で,太陽は主系列星(Main sequence dwarfs)の中ごろになる。
太陽は誕生から100億年たつと大きく膨らんで赤色巨星(Bright faints)となり,さらに白色矮星(White dwarfs)になると考えられている。
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問4
おおいぬ座α星(シリウス)は,年周視差が0.379秒である。
距離は何光年か。
(回答をまとめの下に記す)
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3のまとめ
地球が自転していることは,振り子の振れの方向が変化することでわかる。
地球が太陽を公転することから,恒星の年周視差を求め距離を求めることができる。
問4
回答例 d=3.26÷0.379=8.6光年
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動画 小惑星探査機「はやぶさ」帰還編(14分50秒)
https://www.youtube.com/watch?v=O0mUyfjYQng
動画 コリオリ力(3分17秒)
https://www.youtube.com/watch?v=8MgbHb0QleA
動画 全地球史アトラス12 地球の未来 (7分51秒)
https://www.youtube.com/watch?v=L9KdXRlTZwE
丸善 E-book
理科のおさらい‐天文‐ 大人の楽習17
https://elib.maruzen.co.jp/elib/html/BookDetail/Id/3000007742?1
理科のおさらい 気象 3章 3. コリオリの力
https://elib.maruzen.co.jp/elib/html/Viewer/Id/3000007745?3
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遠隔授業の場合の課題例
1.地球は,他の惑星と異なり,海があり,生命が満ちあふれている。それはなぜか。
2.質問や感想(あれば)
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補遺 天体までの距離 (その2の第6章で詳述)
地球の公転を利用して年周視差から天体までの距離を求めることを紹介した。これは比較的近い天体が対象である。年周視差で測れない天体までの距離を求める方法を羅列する。
分光視差法
恒星の光を虹のような連続した色の光に分けることができる。この帯(スペクトル)には暗線(吸収線)が見える。その吸収線の現れ方でスペクトル型に分類される。これは恒星の表面温度の違いを表す。
このスペクトル型と絶対等級(32.6光年においたときの星の明るさ),言いかえると恒星の表面温度と半径の間には一定の関係があるものを主系列星という。
年周視差で距離がわかっているヒアデス星団の主系列星と比較して見かけの等級のずれから距離を計算する。
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/2/2e/H-R_diagram.png
ヘルツシュプング・ラッセル図(ウィキペディア) 横軸がスペクトル,縦軸が絶対等級,主系列星:Main sequences
標準光源法
絶対等級がわかっている標準光源を用いて見かけの明るさから距離を求める。
脈動型変光星は膨張と収縮を繰り返し明るさが周期的に変わる。その変光周期と絶対等級との間に一定の関係が知られているものがある。変光周期を観測し見かけの等級と絶対等級との差から距離を求める。
Ia型超新星法
最大光度が絶対等級で-19等に達するIa型超新星があらわれれば,その見かけの明るさと絶対等級の差から距離推定に使える。
赤方偏移法
膨張宇宙モデルを仮定して,銀河の赤方偏移から距離を計算する。
宇宙は膨張している。そこで銀河からの光が地球に届くまでの間に膨張して空間がひろがったため,光の波長がのばされる。この本来あるべき波長より長い光として観測され,計算でその銀河までの距離がわかる。
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地球のなかま その2
要点
・惑星は,太陽を公転する動きと地球の公転の動きの組み合わせで,天球の星座(恒星)の間をさまよっているように見える
・惑星と太陽を結ぶ線分が一定時間に通過する面積は一定である(ケプラーの第2法則,面積速度一定の法則)。
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4惑星の運動
5ケプラーの法則
6天体の距離
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本文中の小問をここでも記す。
問5 地球と火星の会合周期は2.13年である。火星の公転周期は何年か。
(4の末尾に回答を記す)
問6 2023年6月4日,金星が東方最大離角となる。45°である。夕方の西の空に輝く金星を見ることができる。金星と太陽の距離が天文単位でどのくらいになるか。
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4惑星の運動
4.1惑星現象
天球面上の構成は,星座の中でのたがいの位置関係を変えることはない。惑星はこれらの恒星の間をさまよっているように見える。惑星が太陽を公転する動きと地球の公転の動きが組み合わさったことによる。
地球よりも外側の軌道を公転する火星,木星,土星などを外惑星,地球よりも内側の軌道を公転する水星と金星を内惑星という。
外惑星の動き
地球から見て,惑星が太陽の方向にあるときを合(ごう),太陽と反対の方向にあるときを衝(しょう)という。衝のとき,外惑星は地球に最も近づくので一番明るく,大きく見える。
内惑星の動き
合の位置が2つある。地球と太陽の間になる内合,太陽の向こうにある外合である。
太陽とともに出没するので観測できない。
内惑星が太陽から最も離れて見えるときを最大離角という。惑星を観測しやすい。
参考サイト 惑星をみる(ふっくんの星空散歩)
http://stardome-momo.littlestar.jp/beginner/look_planets.htm
惑星の位置関係のまとめ
合(ごう) 太陽と同じ方向にあるため惑星は見えない。
内合と外合がある。
内合(ないごう) 内惑星のみの現象。
惑星は太陽と地球の間にある。
外合(がいごう) 内惑星にも外惑星にも見られる現象。
惑星は,太陽の向こうにある。
衝(しょう) 外惑星のみの現象。
太陽の反対側にあり一晩中見える。
東方最大離角 (とうほうさいだいりかく) 内惑星の現象。
太陽から東側に一番離れて見え,日没後の西空で見頃。
西方最大離角 (せいほうさいだいりかく) 内惑星の現象。
太陽から西側に一番離れて見え,夜明け前の東空で見頃。
最大光度 最大光輝ともいう。
内惑星が一番明るく見える現象で,東方(西方)最大離角と内合の間で起こる。
東矩(とうく),上矩(じょうく)
太陽の東側に 90度離れて見える。
日没に南中し深夜0時頃に西に没する。
西矩(せいく),下矩(かく)
太陽の西側に 90度離れて見える。
深夜0時頃に昇って日の出に南中する。
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4.2会合周期と公転周期
衝や内合は地球とその惑星が最接近する位置,そこから公転しながら離れていくが,その後,接近して衝や内合になり,ふたたび接近する。この間の時間を会合周期という。
会合周期:外惑星の衝から次の衝までの時間,または,内惑星の内合から次の内合までの時間。
会合周期S日と地球の公転周期E日とから,惑星の公転周期P日を計算で求めることができる。
地球は外惑星より1日に360/E-360/Pの角度だけ先に進む
外惑星と地球が軌道上を1日に公転する角度は,それぞれ360/P,360/Eである。外惑星は地球より公転周期が長いので,衝の位置から出発して,地球は外惑星より1日に360/E-360/Pの角度だけ先に進む。この角度が毎日加算されて360°になったとき,再び衝の位置になる。
したがって
(360/E-360/P)×S=360 よって 1/S=1/E-1/P
内惑星は地球より公転周期が短いので,外惑星の場合とP,Eの関係が逆になる。つまり
(360/P-360/E)×S=360 よって 1/S=1/P-1/E
例題
地球の公転周期は1.0年,金星の公転周期は0.62年である。地球と金星の会合周期は何年か。
金星は内惑星なので 1/S=1/P-1/E を用いる。
1/S=1/0.62-1/1.0
1=S (1/0.62-1/1.0) =S × (0.38/0.62)
S=1.63(年)
外惑星では,観測から衝から衝の会合周期がまず求まる。
それに基づき公転周期が求まる。
問5
地球と火星の会合周期は2.13年である。火星の公転周期は何年か。
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4まとめ
惑星は,太陽を公転する動きと地球の公転の動きの組み合わせで,天球の星座(恒星)の間をさまよっているように見える
問5の回答例
1/S=1/E-1/P にS=2.13,E=1.0なので,
1/P=1/1.0-1/2.13=1.13/2.13
よって P=2.13/1.13=1.88年
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5ケプラーの法則
天動説 (Ptolemaic theory,Geocentric theory)
地球中心説がもともとの意味。プトレマイオスの時代より1000年以上にわたる西欧の宇宙観。地球のまわりを天体が回転するという考えである。
地動説 (Copernican
theory,Heliocentric theory)
太陽中心説がもともとの意味。16世紀になりコペルニクスは地球をふくめ惑星は太陽を中心とした軌道を運行する地動説を唱えた。コペルニクスの地動説では,軌道は円とされていた。
ケプラー(ドイツ,1571〜1630)ティコ(デンマーク,1546〜1601)の観測データから惑星の軌道と運動を明らかにしようと考えた。円軌道とすると観測データとうまく合わなかった。軌道がだ円であることに気づく。惑星の会合周期から公転周期を求め,距離との間にある法則があることも発見する。
第一法則(だ円軌道の法則)
惑星は,太陽を1つの焦点とするだ円軌道を公転する。
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/1/1a/Kepler-first-law.svg
(ウィキペディアより)
第二法則(面積速度一定の法則)
惑星と太陽を結ぶ線分が一定時間に通過する面積は一定である。
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d5/Plocha_pruvodice.png
(ウィキペディアより)
第三法則(調和の法則)
惑星の公転周期Tの2乗は,惑星の太陽からの平均距離(=だ円軌道の半長軸)の3乗に比例する。
第三法則を使う例題
地球のだ円軌道の半長軸は1AU(天文単位),金星の半長軸は0.72AU(天文単位)である。金星の公転周期は何年か。
ケプラーの第三法則はa3=KT2
ただし,aは惑星のだ円軌道の半長軸,Kは比例定数,Tは惑星の公転周期。
地球は
a=1,T=1なので,13=Kx12
よって,K=1
金星については,
0.723=1xT2
T=0.723の平方根=0.61年
補足
物理の原理にニュートンの「万有引力の法則」がある。ケプラーの第三法則は万有引力の法則から導くことができる。
彗星(すいせい)が突然地球に近づくことがあり,話題になる。その彗星が次に地球に訪れるのは何年後になるかはケプラー第三法則によって求めることができる。
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5-2 ケプラーの生涯
天動説から地動説の流れとケプラーの生涯について以下にやや詳しく記す。
プトレマイオス
紀元後2世紀,プトレマイオスが「アルマゲスト」を著わす。これは当時までのみならずそれ以後1000年以上の間で最大最高の天文学書である。アリストテレスと同じような宇宙論の説明があり,あとはすべて惑星や恒星の観測と理論に関する,きわめて詳細な天文学書である(中山,2011)。
地球中心の宇宙観に基づく。実際の惑星の動きを説明するため,プトレマイオスやほかの天文学者は,単純な円軌道ではなく,軌道上に周転円を設けるなど数学的に表そうとした。
天動説の図(ウィキペディアより)
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/9/9c/Cellarius_ptolemaic_system.jpg
コペルニクス
きわめて多くの円からなる複雑なモデルで天体の動きを表現できるようになったが,その一つ一つの円は実在の宇宙論とは言えないようなものとなった。16世紀に現れたコペルニクスはこの点に不満をもっていた。そこで地球に代えて太陽を中心に置く宇宙像を作り上げようとした。彼は終生を費やして大著「天球の公転について」を1543年に出版した。
宇宙の真実の姿を描き出すことが天文学の目標であって,惑星の動きを数学的に合わせるだけでいけないという考えに至った。それはガリレオやケプラーによって発展することとなった。
コペルニクスが考えた天体の動きの図(ウィキペディアより)
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/9/95/Copernican_heliocentrism_theory_diagram.svg
図のSolが太陽,Tellurusが地球
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惑星の相対距離の決定
コペルニクス体系では,惑星の距離を三角測量の原理で測ることができる。太陽と地球の間の距離を基準にしてそれとの比較で太陽から惑星への距離を求めることができる。
内惑星(水星や金星)
太陽,惑星,地球と順に一列にならぶ時点を過去の観測から決める。内合という。惑星は地球より速く公転するので,内合から数十日経つと惑星Pが地球Eから見て太陽から一番離れた位置に来る。このときの角度<PESを最大離角という。三角形PESにおいて辺ESは地球と太陽の距離で天文単位と呼ぶ。角<SPEは直角なので太陽と惑星の距離PSは,ES(地球と太陽の距離)x sin<PES(最大離角)で求まる。
問6
2023年6月4日,金星が東方最大離角となる。45°である。夕方の西の空に輝く金星を見ることができる。金星と太陽の距離が天文単位でどのくらいになるか。
発展問題
外惑星(火星,木星,土星)の相対距離の決定はどのように行ったら良いか。惑星,地球,太陽の位置関係を考える。
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ガリレオ・ガリレイ(1564-1642)
イタリアの天文学・物理学者。その業績から「天文学の父」と呼ばれる。金星等の観測から天動説は間違いで,コペルニクスの地動説が正しいことを唱えた。
20倍から30倍ほどの倍率を持つ望遠鏡を作り,1609年,望遠鏡を月に向け,月にも山や谷があることを発見。次の年の1610年には,木星には4つの衛星(月)があることを発見する。
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ケプラーの生涯
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/f/f4/Kepler.png
ヨハネス・ケプラー肖像画(ウィキペディアより)
1571年12月27日 南西ドイツ,ワイルに生まれる。
7ヶ月の早生児で虚弱な体質。3歳のときに天然痘にかかり治療が長びき,視力低下。父は1588年ナポリの艦隊にやとわれ戦死,母は精神的に不安定だった。楽しい思い出は,6歳(1577年)のときに,母親に連れられ丘に上がり彗星を見たことと,9歳のときに両親に呼ばれて月食で赤い色の月を見たことであった。
1584-1588年 アーデルベルグとマウルブロンで神学校に通う。
1589-1594年 テュービンゲン大学に通う。
学士号(1588年試験で)と修士号(1591年)を得る。
テュービンゲン大学(ウィキペディアより)
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/8/81/Uni_T%C3%BCbingen_Neue_Aula_Sommer.jpg
テュービンゲン大学旧校舎(ウィキペディアより)
1594年 シュタイアーマルクに行く。数学教師とその地の数学官に就く。
オーストリア共和国内のシュタイアーマルク州の位置。首都はグラーツである。ウィキペディアより
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/3/39/Steiermark_in_Austria.svg
1598年9月28日 シュタイアーマルクで対抗宗教改革がはじまる。
プロテスタントの教師や説教師が追放されるが,ケプラーはひと月で戻ることを許される。
1600年1-6月 ティコ・ブラーエを訪ねる。
ウラニボルについて
デンマーク国王は,1575年,エーレスンド(デンマークとスウェーデンを隔てる海峡)に浮かぶヴェン島をティコ・ブラーエに与え,天文台を建て運営できるよう資金も用意した。それから20年間,ティコはウラニボル「ウラニア(天文の神)の城」をヨーロッパ初の科学研究所にした。それはルネッサンス様式の城で,ティコは特別注文で建てた。
ブラーエの著書に描かれたウラニボル(ウィキペディアより)
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/8/85/Uraniborgskiss_90.jpg
1600年9月30日 プロテスタントすべてを追放,ケプラーは家族とともにシュタイアーマルクを去る。
1601年10月24日 ティコ・ブラーエ死す。数日後,ケプラーがプラハの神聖ローマ皇帝ルドルフ2世の帝国数学官になる。
1605年 火星の軌道が楕円であることを見出す。
1609年 「新天文学」を出版。第1法則と第2法則を含む。
1610年3月 ガリレオ「星界からの報告」出版。ケプラーは5月に「星からの使者との対話」を出版。
ケプラーは,ガリレオの発見を支持する。ガリレオはさまざま中傷に直面していたので,帝国数学官であるケプラーの支持は助けとなった。ただガリレオからはケプラーに礼はなく,またケプラーの天文学の業績への評価もなかった。ケプラーはガリレオと手紙のやりとりを行おうとしたが,ガリレオからの反応はなかった。ガリレオの無礼さについて控えめなケプラーが不平を言うことはなかった。
1618年5月15日 第3法則を発見。
1619年 「世界の和声学(渡辺訳)あるいは世界の調和(林訳)」をリンスで出版。第3法則の発表。
1620年8月7日から1621年8月 母親カタリーナ・ケプラーは魔法を使ったとして逮捕,ケプラーは弁護のためヴュルテンベルグ(現在のドイツのバーデンヴュルテンベルグ州北東部)に帰る。
1621年10月3日 解放
1622年4月13日 気力を奪われたカタリーナ死去。
1625年10月 上オーストリア(リンツ)対抗宗教改革,改宗を強制しプロテスタントの儀式を禁じる。
ケプラーはその地位のおかげでこれらの処置から免れる。
1626年 リンツを離れる。
1626年12月から1627年9月 天体運行表「ルドルフ表」をウルムで印刷。
天体運行表は現在の理科年表「暦部」と「天体部」を数年分あわせたようなもので,おもに諸惑星の位置推算表からなる。天文学者や航海者にとって重要なものである。当時は占星術で貴重であった。
天体運行表(惑星の位置推算表)は,プトレマイオスの体系に基づく「アルフォンソ表」(13世紀後半)やコペルニクスの体系に基づく「プロイセン表」(1551年)があった。新しい天体運行表は,ケプラーの法則に基づく数値で,従来のものに比べはるかに高い精度であった。
1630年11月15日 逝去(レーゲンスブルクにて)
人生の終わり近くになってケプラーは,それまで目撃されてこなかった出来事を予測した。水星が1631年11月7日に太陽面を通過するというものであった。ケプラーの予測時刻の6時間以内に水星の太陽面通過が観測された。彼の死後約1年であったが,ケプラーの惑星理論の正確さが実証された。
参考文献
「ヨハネス・ケプラー 天文学の新たなる地平へ」
ジェームス・R・ヴォールケル著 林大訳,オックスフォード科学の肖像,大槻書店,166 p,2010年.
「ケプラーの夢」
ヨハネス・ケプラー著 渡辺正雄・榎本恵美子訳,講談社学術文庫,282 p,1985年.
「天の科学史」
中山 茂 著,講談社学術文庫,267 p,2013年。
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5のまとめ
ケプラーの法則
第一法則(だ円軌道の法則)
惑星は,太陽を1つの焦点とするだ円軌道を公転する。
第二法則(面積速度一定の法則)
惑星と太陽を結ぶ線分が一定時間に通過する面積は一定である。
第三法則(調和の法則)
惑星の公転周期Tの2乗は,惑星の太陽からの平均距離(=だ円軌道の半長軸)の3乗に比例する。
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6天体の距離
地球が公転するため,地球近くの恒星の見える方向ははるかに遠い恒星の配置に対して1年を周期とした変化から,その恒星までの距離をはかることをすでに述べた。天体までの距離を測る方法をあらためて整理してみる。
レーダー測距法
水星,金星,火星の距離はレーダーの反射波の往復時間から直接測ることができる。測定時の惑星の軌道上の位置がわかっているので,太陽までの距離1天文単位は精確に測定できている。
年周視差法
地球が太陽のまわりを公転しているので,地球近くの恒星の見える方向ははるかに遠い恒星の配置に対して1年を周期として変化する。基線として地球の公転半径(1天文単位)をとったときの視差をその恒星の年周視差(単位は秒)という。
年周視差(ウィキペディアより)
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/e/e3/Stellarparallax2.svg
年周視差をp (秒),目的とする恒星の距離をrとすると,pは微小なのでpとrは反比例すると考えてよい。
p=1(秒)の角度のとき,r=3.26光年になる。恒星までの距離の単位には,光年やパーセク(pc)が使われる。1光年とは,光が1年間に進む距離,1パーセクとは,年周視差1秒に相当する距離で3.26光年となる。つまり,
r=1÷p(パーセク)=3.26÷p(光年)
問
太陽に最も近いケンタウルス座α星は,年周視差が0.755秒である。距離はどのくらいか。
回答例 距離r(光年)=3.26÷0.755=4.3
分光視差法
恒星の光を虹のような連続した色の光に分けることができる。この帯(スペクトル)には暗線(吸収線)が見える。その吸収線の現れ方でスペクトル型に分類される。これは恒星の表面温度の違いを表す。
このスペクトル型と絶対等級(32.6光年においたときの星の明るさ),言いかえると恒星の表面温度と半径の間には一定の関係があるものを主系列星という。
年周視差で距離がわかっているヒアデス星団の主系列星と比較して見かけの等級のずれから距離を計算する。
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/2/2e/H-R_diagram.png
ヘルツシュプング・ラッセル図(ウィキペディア) 横軸がスペクトル,縦軸が絶対等級,主系列星:Main sequences
標準光源法
絶対等級がわかっている標準光源を用いて見かけの明るさから距離を求める。
脈動型変光星は膨張と収縮を繰り返し明るさが周期的に変わる。その変光周期と絶対等級との間に一定の関係が知られているものがある。変光周期を観測し見かけの等級と絶対等級との差から距離を求める。
Ia型超新星法
最大光度が絶対等級で-19等に達するIa型超新星があらわれれば,その見かけの明るさと絶対等級の差から距離推定に使える。
赤方偏移法
膨張宇宙モデルを仮定して,銀河の赤方偏移から距離を計算する。
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