岩石と鉱物 Rock and Mineral 2024.08.30

この科目の初めの頃に地質の基礎として岩石や鉱物について簡単にふれました。ここで改めて岩石や鉱物を系統的に整理します。岩石や鉱物を調べる偏光顕微鏡の原理や実際の観察法も紹介します。

岩石と鉱物 その1

1主な鉱物

2岩石の分類

3偏光顕微鏡

岩石と鉱物 その2

4岩石の定量的分類

5偏光顕微鏡と結晶光学

6鉱物から岩石の成因をさぐる

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・鉱物は,原子が規則正しく配列した結晶で,物理化学的に均一

・岩石は鉱物の集まりで,火成岩,堆積岩,変成岩に分けられる

・鉱物観察に偏光顕微鏡が使われる

 

自習の能率を上げるため,本文中の問いをまとめる。

問い1

造岩鉱物は酸素とけい素が作る四面体が基本となるけい酸塩鉱物が多い。ところが天然にはけい酸塩鉱物以外の鉱物もある。次のうち,「けい酸塩鉱物で“ない”」ものはどれか。

石英,角閃石,方解石,黒雲母  

(回答例を1のまとめの下に記す) リンク

問い2

火成岩は大きく火山岩と深成岩に分けられる。その肉眼的な違いは何か。

(回答例を2まとめの下に記す) リンク

問い3

偏光顕微鏡が通常の生物顕微鏡と異なる特徴は何か。

(回答例を3のまとめの下に記す) リンク

 

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1 主な鉱物Basic minerals

 

鉱物は,物理的化学的に均一な無機質固体。岩石は鉱物が複数集合したもの,火成岩,堆積岩,変成岩に分けられる。

 

鉱物

鉱物は,原子が規則正しく配列した結晶からなる。岩石を形づくる鉱物を造岩鉱物(ぞうがんこうぶつ)とよぶ。主要な造岩鉱物は,石英(せきえい) ,長石(ちょうせき),かんらん石,輝石(きせき),角閃石(かくせんせき),黒雲母(くろうんも)である。大部分の造岩鉱物は,けい素(Si)や酸素(O)を主成分としてこれに他の元素が加わった化合物で,けい酸塩鉱物という。

 

けい酸塩の基本,けい素(Si)と酸素(O)の四面体(ウィキペディアより)

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/8/85/SiO4_tetrahedral.svg

この基本の四面体がどのように結合しているか,ほかにどんな元素が加わっているかでいろいろの鉱物となる。

 

石英

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/c/ce/Quartz_Br%C3%A9sil.jpg

二酸化けい素(SiO2)が結晶してできた鉱物。自形結晶は六角柱状をなし,無色透明なものを水晶という。一般的な鉱物で火成岩,変成岩,堆積岩にしばしば含まれる。

構造:Si-O四面体が4つの角(O)のすべてを共有して3次元的につながって網状構造をつくる。一つの酸素が4つの四面体の一部となると考え,SiO2となる。

多形:SiO2鉱物は,石英以外に,温度や圧力の条件の違いで,結晶構造が異なる(SiO4四面体の結合が異なる)シリカ鉱物になる。このようなことを多形の関係にあるという。

用途:けい砂(石英砂)はガラス製造に使われる。

ガラスの成分はSiO2であるが,石英だけでは溶かすのに高温にしなければならない。そのほかの成分を加えて溶融温度や粘性を下げる。(例:けい砂70%に,炭酸ソーダ15%,石灰石10%,ドロマイト5%を加える)

 

「東海のガラス製造のさきがけ」石塚硝子株式会社(岩倉市川井町1881) 

石塚岩三郎が土田村(岐阜県可児市)1819年にガラス製造を行ったことに由来する。東海地方ガラス製造のさきがけ。

石塚硝子株式会社 https://www.ishizuka.co.jp/

 

長石

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/ja/7/78/%E6%AD%A3%E9%95%B7%E7%9F%B3.jpg

概して白色で矩形を呈する。地殻表層の60%を占め,ほとんどの岩石に含まれる。

長石の代表は斜長石とアルカリ長石。斜長石はアルバイト(NaAlSi3O8)からアノーサイト(CaAl2Si2O8)まで連続的に化学組成が変化する。アルカリ長石は,化学組成がKAlSi3O8,結晶系の違いで正長石とマイクロクリンに分けられる。

長石は陶磁器の「うわぐすり」となる

粘土でつくった器をそのまま焼いたものは「素焼き」と呼ばれ,表面は粗く,色を選べず,水を吸収しやすい。素焼きした陶器の表面に釉薬(ゆうやく,うわぐすり)を付けて焼くと,表面はガラス質となり,耐水性が増す。釉薬は,例えば,草木の灰に長石やけい石を配合したもの。金属成分を加え,色あいを表現できる。

構造:石英と同じSi-O四面体が三次元的につながる網状構造。SiAlに置き換わり価数が変わり,そこを補うようにNaCaKが入り込む。

 

かんらん石

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/f/f4/Forsterite-37005.jpg

化学組成:(Mg, Fe(2))2SiO4,組成により黄緑色や褐色を呈する。はんれい岩,かんらん岩,玄武岩に含まれる。結晶構造が最密のため,大きな比重をもつ。

構造:Siイオンは4+,Oイオンは2-,そこで基本のSi-O四面体はけい素1,酸素4なので価数4-である。かんらん石は四面体が独立した鉱物,Mg2-2個が四面体SiO44-の価数4-を補い,かんらん石 Mg2SiO4となる。

多形:苦土かんらん石(Mg2SiO4)は,上部マントルの主要鉱物と考えられている。さらに高圧(深部)では構造が変わる(転移する)。遷移層ではスピネル構造に,下部マントルではペロブスカイト構造というものになる。

用途:かんらん石は高温に耐える性質を有している。そこで溶鉱炉の内部壁面や炉から流れ出る融鉄の受け皿として使われる。製鉄では鉄鉱石,石灰石,石炭を使うが,副材料としてかんらん石()をまぜ不純物を取り除く。このように製鉄産業に欠かせない。

宝石としてペリドットはかんらん石できれいなもの。誕生石(8)

 

輝石

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/0/03/Fassa%C3%AFte.jpg

化学組成は,XY(Si, Al)2O6X=CaNaFeMgY=CrAlFeMg。多くの火成岩や変成岩に含まれる。色は,無色,緑色,褐色,黒色,自形結晶は短柱状,二方向のへき開が90度で交わる。

 

角閃石

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/9/9d/Amphibole.jpg

化学組成は,(Ca, Na)2-3(Mg, Fe(2),Fe(3)Al)5(Al, Si)8O22(OH)2と複雑であるが,Ca, Mg, Feを含み,水酸基(OH-)をもつ含水けい酸塩鉱物と要約できる。

一般的な造岩鉱物でさまざまな岩石に産出する。色は,無色,緑色,褐色,青色で,自形結晶は長柱状で2つのへき開が120度で交わる。

 

黒雲母

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/9/98/MeroxeneSomma.png

化学組成はK(Mg, Fe)3AlSi3O10(OH,F)2,へき開が一方向であるため,薄く一方向にはがれる。火成岩のうちではけい長質な岩石に普通に含まれる。

 

そのほかの鉱物

主要造岩鉱物以外についても重要な鉱物がいろいろある。その例を3つ紹介する。

ジルコン ZrSiO4 けい酸塩鉱物。花こう岩などに少量含まれる。年代測定によく使われる。

方解石 CaCO3 炭酸塩鉱物。石灰岩の主要鉱物。

磁鉄鉱 Fe3O4 酸化鉱物。多くの火成岩や変成岩に少量含まれる。鉄の代表的鉱石鉱物。

 

問い1

造岩鉱物は酸素とけい素が作る四面体が基本となるけい酸塩鉱物が多い。ところが天然にはけい酸塩鉱物以外の鉱物もある。次のうち,「けい酸塩鉱物で“ない”」ものはどれか。

 

石英,角閃石,方解石,黒雲母

(回答例を1のまとめの下に記す)

 

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1のまとめ

鉱物は,原子が規則正しく配列した結晶からなる。岩石を構成する主な鉱物(造岩鉱物)は,けい素(Si)と酸素(O)を主成分としてこれに他の元素が加わったけい酸塩鉱物である。そのほかに炭酸塩鉱物や酸化鉱物などがある。

 

問い1の回答例

方解石

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2岩石の分類 Classification of the rocks

岩石は鉱物が複数集合したものである。

岩石は,マグマから固まってできた火成岩(かせいがん),地球表面上で堆積した堆積岩(たいせきがん),すでにある岩石が熱や圧力を受けて変化した変成岩(へんせいがん)に大きく分けられる。さらに,成因,構成鉱物,岩石の組織から細分する。

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火成岩

火成岩は,マグマが固まってできた岩石で,火山岩(かざんがん)と深成岩(しんせいがん)に区別される。火山岩は概して細粒,深成岩は粗粒である。

化学組成で,けい酸(SiO2重量%)が少ないものから多いものの順に,超苦鉄質(ちょうくてつしつ),苦鉄質(くてつしつ),中間質,けい長質。この順に黒っぽいから白っぽいと色調が変わる。

・深成岩の分類:超苦鉄質は,かんらん岩,苦鉄質は,はんれい岩,中間質は,せん緑岩,けい長質は,花こう岩である。

・火山岩の分類:苦鉄質は,玄武岩(げんぶがん),中間質は,安山岩,けい長質は,りゅうもん岩である。

 

 

超苦鉄質岩

苦鉄質岩

中間質岩

けい長質岩

SiO2重量%

40 45

45 52

52 63

63 〜 75

火山岩

 

玄武岩

安山岩

りゅうもん岩

深成岩

かんらん岩

はんれい岩

せん緑岩

花こう岩

 

火山岩は,斑晶(はんしょう)と細粒の石基(せっき)からなる。斑晶はマグマ中に含まれていた結晶で大きい。石基はマグマが急冷してできたため細粒の結晶とガラスからなる。

このため火山岩は構成鉱物で分類は難しく,SiO2量によって行われる。

深成岩は,粗粒の鉱物が集合したものなので,構成鉱物の量比によって分類できる。

深成岩の造岩鉱物の含まれ方は概略次の通り。

かんらん岩:かんらん石,輝石からなる。角閃石を含むこともある。

はんれい岩:かんらん石,輝石,斜長石(Caに富む)からなる。角閃石を含むこともある。

せん緑岩:輝石と角閃石,斜長石からなる。

かこう岩:黒雲母,斜長石(Naに富む),アルカリ長石,石英からなる。角閃石を含むこともある。

これを表に示す。

 

はんれい岩

せん緑岩

花こう岩

 

造岩鉱物

 

 

斜長石(Ca富む)

輝 石

角閃石

かんらん石

 

斜長石

角閃石

輝 石

 

石 英

アルカリ長石

斜長石(Na富む)

黒雲母

角閃石

色指数 (苦鉄質鉱物の量%)

35 65

25 50

5 20

密度

大きい

中間

小さい

Fe, Mg, Ca

多い

中間

少ない

Si Na, K

少ない

中間

多い

 

火山岩の例

玄武岩(ウィキペディア)

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/0/08/BasaltUSGOV.jpg

玄武岩の産状(柱状節理),ウィキペディアより

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/ja/d/d6/Genbu-do01.jpg

 

深成岩の例

花こう岩(ウィキペディア)

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/ja/9/90/Granite01.jpg

花こう岩の古い道標(ウィキペディア)

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/ja/d/dc/Granite_guidepost01.jpg

 

問い2

火成岩は大きく火山岩と深成岩に分けられる。その肉眼的特徴は何か。

回答は2まとめの下に記す。

 

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堆積岩

堆積岩は,砕屑性堆積岩,化学−生物的岩石,火山性岩石に分けられる。

 

・砕屑性堆積岩は,風化作用で分解した粒子(砕屑物,さいせつぶつ)が固まった岩石で,砕屑物の大きさ(粒度)で細分する。

粗粒のもの:れき岩,角れき岩(粒径2mm以上)

中粒のもの:砂岩 (粒径 1/162mm)

細粒のもの:泥岩 (粒径 1/16mm 以下)

化学-生物性堆積岩は,生物の遺骸が集まってできる(生物岩),あるいは海底の熱水などの成分が化学的に沈殿してできる化学岩である。 

けい質:チャート(放散虫が集まってできた)

石灰質:石灰岩(貝やサンゴなどからできた)

炭素質:石炭(特殊な環境のもとで植物遺骸からできた)

火山性堆積岩は,火山からの噴出物が堆積したもの。 

火山()れき岩:主に火山岩塊よりなる。火山岩塊は火山から放出の時に固体で直径32o以上のもの。

火山れき凝灰岩:主に火山れきからなる。火山れきは32-4oのもの。

凝灰岩:主に火山灰からなる。火山灰は4o以下。

凝灰角れき岩:火山岩塊(火山角れき)と火山灰からなる。

 

砕屑性堆積岩の例

れき岩(ウィキペディア)

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/b/b7/Conglomerate-bolle2.jpg

 

化学-生物堆積岩の例

石炭(ウィキペディア)

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/7/72/Coal_anthracite.jpg

石炭採掘(ウィキペディア)

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/0/05/Coal_mine_Wyoming.jpg

 

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変成岩

変成岩は,もともとあった岩石が圧力や熱の新たな条件で形を変えた岩石である。大きく接触変成岩と広域変成岩に分けられる。

 

・接触変成岩(せっしょくへんせいがん)マグマと接触して生じる変成作用でできる。

ホルンフェルス-原岩は砂岩や泥岩など。

結晶質石灰岩(大理石)-原岩は石灰岩。

・広域変成岩(こういきせんせいがん)広域に岩石が置かれた場所の地温勾配(ちおんこうばい)に応じた変成作用でできる。

結晶片岩-薄くはがれる片理構造を持つ。原岩の違いや構成鉱物から細かく区分することがある。例:砂質片岩,雲母片岩。

片麻岩(へんまがん)-縞状(しまじょう)構造を持つ。特徴的な鉱物名を冠することもある。例:黒雲母片麻岩。

 

接触変成岩の例

ホルンフェルス(ウィキペディア)

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/7/71/Hornfels.jpg

結晶質石灰岩(ウィキペディア)

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/8/8d/MarbleUSGOV.jpg

 

広域変成岩の例

緑泥石片岩(ウィキペディア)

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/8/86/Chlorite_schist.jpg

片麻岩(ウィキペディア)

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/60/Gneiss.jpg

 

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2のまとめ

岩石は鉱物の集合体です。その岩石は大きく火成岩,堆積岩,変成岩にわけられます。

 

問い2の回答例

火山岩は細粒,深成岩は粗粒。

 

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3偏光顕微鏡(へんこうけんびきょう) Polarizing microscope

 

岩石中の鉱物を肉眼やルーペなどでは観察に限界がある。鉱物の同定や化学組成の推定に,偏光顕微鏡を用いることがある。普通の顕微鏡と違い,二枚の偏光板を使い,ステージが回転する。

岩石をプレパラートに貼り付け,光が通るまで薄くする(通常は0.02-0.03mm)。このプレパラートを偏光顕微鏡でのぞくと,色や形から鉱物を同定でき,場合によっては化学組成がわかる。

 

偏光顕微鏡下での鉱物のようす

http://www.kusa.ac.jp/~tkato/microscope/atlas/3.html

倉敷芸術科学大学地学教室(インターネット岩石図鑑)

 

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偏光顕微鏡の原理 (難しいかもしれない。省略してよい。)

 

偏光顕微鏡は通常の顕微鏡に偏光板をとりつけたものである。偏光板はサングラスなどで使う偏光レンズである。サングラスが二つ,あるいは不要なサングラスの右と左レンズをばらばらにして二つのレンズを重ねることができるように用意すると偏光板の特性がわかる。二つの偏光板を重ねて一方を回転すると90度ごとに暗黒になる。偏光板は光の振動方向を一方向にする性質があるので,偏光板二つの光の振動方向が直交すると光を通さなくなる。

 

偏光顕微鏡ではプレパラートの下と上にこの光の振動方向が直交するように偏光板を配し,上の偏光板は出し入れできるようにしてある。上の偏光板を外した状態での観察を下方ポーラー(あるいは平行ポーラー)での観察,上の偏光板を入れた状態の観察を直交ポーラーでの観察をいう。

 

この観察を有効にするため,プレパラートを置くステージが回転できるようになっている。普通の顕微鏡にない偏光顕微鏡の特徴は,偏光板を有することとステージが回転することである。

 

偏光顕微鏡の例(ウィキペディアより)

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/9/95/Leica_petrographic_microscope.jpg

ステージが回転できるようになっていて回転角がわかるよう目盛りが入っている

 

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異方性鉱物の光の振動方向

光が下の偏光板に入ると,直線偏光になる。この偏光が,任意の方向に切られた光学的異方体の薄片に入ると,互いに直角でかつ速さの異なる二つの直線偏光に分かれる。次にこの二つの偏光が上方の偏光板に達すると,その偏光板の方向の成分だけが通過して,われわれの目に達する。 

試料の二つの偏光が上方の偏光板を通ることによって,共通な方向(上方の偏光板の光の方向)に合成される。

異方性鉱物を偏光顕微鏡で観察するとたいていは明るく見え,ステージを回転すると明るさが変化し,1回転の間に4回暗黒になる。消光という。

 

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非晶質と等方性の鉱物の見え方

鉱物は,非晶質,等方性,異方性に分けられる。

非晶質は結晶としての性質をもたない,例えばガラスなどである。等方性の鉱物とは,3つの結晶軸が同じ性質をもっているもので,例えばざくろ石などである。そのほかの多くの鉱物は異方性で結晶軸の性質が異なる。1節で紹介した主要造岩鉱物は異方性である。

非晶質や等方性の鉱物を直交ポーラーのもとで観察するといつも暗黒である。

 

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偏光顕微鏡で観察できること

 

下方ポーラー(あるいは平行ポーラー)での観察

色:石英や長石は無色透明,黒雲母や角閃石などの苦鉄質鉱物はそれぞれの色を示す。

多色性:苦鉄質鉱物ではステージの回転で色が変化するものがある。

へき開:鉱物にへき開があると筋(へき開線)が見える。

 

直交ポーラー(下方ポーラーと上方ポーラー)での観察

干渉色:鉱物に特有の色が見える。

消光角:へき開線あるいは自形鉱物の長辺を上下方向に平行にする。

消光するまでステージを回転しその角度を測る。

消光角が0度の場合を直消光,そうでない場合を斜消光という。

 

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偏光顕微鏡で鉱物や岩石の観察を行う

 

デジタル顕微鏡(岐阜大学)

http://chigaku.ed.gifu-u.ac.jp/chigakuhp/html/kyo/chisitsu/dezital_henkoh/

この顕微鏡を使い,鉱物や岩石を観察する。

 

ステージ1回転で4回消光する

1.石英1を選ぶ。

2.右上操作盤のNicolCROSSを選ぶ(直交ポーラー)

3.ステージ回転で反時計回りまたは時計回りを押し,それを繰り返す。

回転して,石英の明るさが変わり,4回暗黒になるのがわかる。暗黒になることを消光という。

 

直交ポーラーで異方性の鉱物は通常明るいが,等方性の鉱物はいつも暗黒となる。

等方性鉱物はいつも暗黒

1.NicolOPENにする。下方ポーラーだけの状態である。

2.ザクロ石を選ぶ。

3.ざらざらした(屈折率が高い)鉱物であることがわかる。

4.NicolCROSSにする。

5.どう回転しても暗黒である。

 

多色性の観察

1.OPENにする。

2.黒雲母を選ぶ。

3.ステージを回転して色が変化することを観察する。

黒雲母の例:濃赤褐色〜淡褐色

 

消光角の測定

1.平行ポーラーにする。

2.鉱物の伸びの方向またはへき開線(鉱物中の筋)の向きを縦方向に一致させる。

3.直交ニコルにしてステージを何度回転して暗黒になるかを調べる。

4.その角度を消光角という(小さい方をとる)

黒雲母の例:0

 

体験

多色性の観察を行う

紅簾石(こうれんせき)

角閃石

 

体験

消光角を測定する

角閃石

斜長石

 

体験

斜長石とアルカリ長石の区別

斜長石とアルカリ長石を肉眼で区別するのが難しいが,偏光顕微鏡を使うと容易に区別できる。

それは斜長石が特徴的な性質(見え方)を示すからである。それは何か。

 

体験

岩石を観察

火成岩

深成岩と火山岩の代表的なものを観察する

深成岩:花こう閃緑岩

火山岩:玄武岩

 

堆積岩

砕屑岩と生物岩の代表的なものを観察する

砕屑岩:砂岩

生物岩:石灰岩1

 

変成岩

片麻岩と片岩の代表的なものを観察する

片麻岩:黒雲母片麻岩

片岩:白雲母片岩

 

問い3

偏光顕微鏡が通常の生物顕微鏡と異なる特徴は何か。

回答例をまとめの下に記す。

 

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まとめ

偏光顕微鏡は二つの偏光板を交差させて鉱物を観察するものです。これによって鉱物の光学的性質がわかり,観察が正確になります。

 

問い3の回答例

偏光板を使う,ステージが回転する。

 

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付録

青空文庫:尾崎放哉の短編 「石」,石は生きている,という話。

https://www.aozora.gr.jp/cards/000195/files/4446_7697.html

 

動画:

・英国の採石場 (335) コッツウォルズ

https://www.youtube.com/watch?v=9YEJePoDlME

Learning minerals (8 min 39 sec)

How to identify a Mineral - YouTube

 

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遠隔授業の場合の課題

岩石は大きく堆積岩,火成岩,変成岩に分けることができる。

(1) 火成岩とは何か。

(2) 次の岩石のうち,火成岩はどれか(2つある)

  砂岩,安山岩,ホルンフェルス,石灰岩,花こう岩,片麻岩

(3) 感想や質問があれば記す。

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(以下は専門性の濃い内容,興味があれば専門家の助言など得て進める)

岩石と鉱物その2

岩石や鉱物の違い,岩石の分類,偏光顕微鏡による観察方法についてすでに解説しました。ここでは少し深めてみます。

4.岩石の定量的な扱いを紹介します。

5.偏光顕微鏡の見え方については,結晶光学の知識を加えてみます。

6.鉱物の性質から,岩石がどんな条件できたかを探る事例を紹介します。

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4岩石の定量的分類

4.1モード組成

岩石を顕微鏡で観察できるよう,プレパラートにはりつけ薄くしたものを薄片という。

岩石を構成する鉱物の量の割合は,岩石の薄片のなかにおける鉱物の量の割合を測定すればよい。粗粒の岩石であれば岩石を板状に切った岩石片(スラブ)上で,顕微鏡を使わず鉱物の割合を測定する。

 

ポイントカウンター:薄片を等間隔に移動して視野の中央の鉱物を同定して数える

http://www.nichika-kyoto.com/product/kougaku/prod_4.html

 

染色

花こう岩は粗粒なのでスラブを利用することがある。花こう岩は主に石英と長石からなる。

石英は透明ガラス様で長石と区別が容易である。

長石は斜長石とカリ長石からなる。カリ長石がピンクないし赤みを帯びていれば区別がつく。そのような色を呈さないカリ長石と斜長石は肉眼では区別がつきにくい。

そのような時,薬品で反応させて染色をすることがある。

 

染色方法:

目的の面をフッ化水素酸(フッ酸)3分間浸す

水道水で十分水洗する

コバルチ亜硝酸ナトリウムの粉末を塗り3分放置

水洗,乾燥させる

カリ長石が黄色に染色される

 

花こう岩のカリ長石を染色した例(信州大学)

http://science.shinshu-u.ac.jp/~geol/harayama/laboratory.html

 

モード組成の実際

体験型授業ではアルカリ長石が赤色になっているスラブを用いた。

その画像に計測線を等間隔に10本くらい縦横にひいてその交差点の鉱物を同定する

石英,斜長石,アルカリ長石,黒雲母の割合が決まる。石英,斜長石,アルカリ長石の割合を計100%に再計算して国際的な分類図に記すと正確な岩石名となる。

 

花こう岩類の分類(ウィキペディアより)

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/40/QAPF_diagram_granite.svg

Q:石英,K:アルカリ長石,P:斜長石,F:準長石

 

4.2ノルム組成

鉱物が細粒であったりすると鉱物比であらわすのが困難となる。岩石を粉にして化学分析を行い,それから鉱物比を求めることがある。火成岩についてはその手法がほぼ完成している。

ノルムの計算とよび得られる鉱物をノルム鉱物という。ノルム鉱物の中には計算の便宜上,仮想的鉱物もある。マグマから鉱物が晶出する順にノルム鉱物を順に求め,さしひいた化学組成の成分の量からそのほかのノルム鉱物をさらに求めていく。

場合分けで計算の経路が変化するため,手計算では手間がかかる。数が多いときは,エクセルで計算法にしたがい,条件文などを使い計算をできるようにしておく。

 

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例題

(ノルム鉱物)イルメナイトilm/正長石or/アルバイトab/アノーサイトan/コランダムC/磁鉄鉱mt/ハイパーシーンhy/石英Q

成分

重量%

分子量

分子比

il

or

ab

an

C

mt

hy

Q

SiO2

71.0

60.06

1.182

 

264

336

92

 

 

29

461

TiO2

0.2

79.90

0.002

2

 

 

 

 

 

 

 

Al2O3

15.9

101.94

0.156

 

44

56

46

10

 

 

 

Fe2O3

0.6

159.68

0.003

 

 

 

 

 

3

 

 

FeO

1.3

71.84

0.018

2

 

 

 

 

3

13

 

MnO

0.1

70.93

0.001

 

 

 

 

 

 

1

 

MgO

0.6

40.32

0.015

 

 

 

 

 

 

15

 

CaO

2.6

56.08

0.046

 

 

 

46

 

 

 

 

Na2O

3.5

61.99

0.056

 

 

56

 

 

 

 

 

K2O

4.1

94.2

0.044

 

44

 

 

 

 

 

 

99.9

 

分子比

0.002

0.044

0.056

0.046

0.010

0.003

en0.015

fs0.014

0.461

ノルム鉱物重量% (= 分子比 x 分子量)  il 0.3   or 24.5  ab 29.4  an 12.8    C 1.0   mt 0.7   hy 3.3  Q 27.7

(en 1.5 fs 1.8)

 

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ノルムの計算

T.分子比の計算

化学分析結果は酸化物(SiO2, Al2O3,‥)の重量パーセントで与えられている。それぞれの値を酸化物の分子量で割って,分子比を求める。

MnOは少量成分なのでその分子比をFeOの分子比に加える。

 

U.副成分鉱物の計算

比較的少量出てくる鉱物の量を計算しておく。

TiO2の分子比の値にはそれと同じFeOを付け加え,イルメナイト(記号 il)FeOTiO2を作る。FeOは残る。

 

V.主成分鉱物の計算

(a)正長石(記号 or)K2OAl2O36SiO2を計算する。計算後,K2Oが残るときとAl2O3が残るときがある。普通はAl2O3が残る。

(b)残ったAl2O3Na2Oと結合してアルバイト(記号 ab)Na2OAl2O36SiO2をつくる。Na2Oが残るときとAl2O3が残るときがある。Al2O3が残る場合で続ける。

(c)残っているAl2O3CaOを結合してアノーサイト(記号 an)をつくる。計算後,CaOが残るときとAl2O3が残るときがある。Al2O3が残ったらコランダム(記号 C)を計算する。CaOが残るときは一旦放置する。

(d)Fe2O3は,(b)Na2Oが残っていたら錘輝石(記号 ac)Na2OFe2O34SiO2をつくる。残ったFe2O3は,FeOと結合して磁鉄鉱(記号 mt)をつくる。(b)Na2Oが残っていなければただちに磁鉄鉱をつくる。磁鉄鉱をつくった後にFe2O3が残れば赤鉄鉱(記号 hm)にする。多くはFeOが残る。

(e)ここまでで(c)CaOが残っている場合,MgOと残っているFeOをこの時点の比と同じ割合にしてディオプサイド(記号 di)CaO(Mg,Fe)O2SiO2を計算する。このとき,CaO:(MgO+FeO)=1である。

(f)ディオプサイド計算後にCaOが残っていたらSiO2と結合してウラストナイト(記号 wo)CaOSiO2をつくる。普通は(Mg,Fe)Oが残っている。これにSiO2を結合させて,ハイパーシーン(記号 hy)(Mg,Fe)OSiO2やかんらん石(記号 ol)2(Mg,Fe)OSiO2をつくる。ハイパーシーンとかんらん石とのどちらになるか,あるいは両方になるかは次のSiO2の量により決まる。ディオプサイド,ハイパーシーン,かんらん石ではこの時までに残っているMgOFeOとの比と同じ割合になるよう計算する。

 

W.SiO2の分配

(a)ここまで計算してきた副成分鉱物および主成分鉱物のすべてに,必要なSiO2を分配する。主成分鉱物の計算の(f)で,まず(Mg,Fe)OはハイパーシーンとなるようにそれだけのSiO2があればかんらん石をつくるには至らない。まだSiO2が残るときには,残ったSiO2は石英(記号 Q)SiO2とする。花こう岩など実際に石英を含む岩石はここまでである。

(b)ハイパーシーンだけを計算するにはSiO2が不足する場合,主成分鉱物の計算の(f)の計算をやり直して,ハイパーシーンとかんらん石をつくる。ハイパーシーン(Mg,Fe)OSiO2の分子比をhy,かんらん石2(Mg,Fe)OSiO2の分子比をolとする。ハイパーシーンやかんらん石の計算直前に残っているSiO2(Mg,Fe)Oが使える。

hy=2x使えるSiO2-使える(Mg,Fe)O

ol=使える(Mg,Fe)O-使えるSiO2

玄武岩などの苦鉄質岩まで含む,日本の多くの火成岩はここまでの計算で求めることができる。

 

さらにSiO2が不足する場合は,主成分鉱物の計算の(b)の段階までもどってアルバイトの一部あるいは全部やめてネフェリン(記号 ne)Na2OAl2O32SiO2を計算する。さらにまだSiO2が足りないとリューサイト(記号 lc)K2OAl2O34SiO2などを計算する。

 

X.重量パーセントの計算

このようにして求められたノルム鉱物の量は分子比である。それを普通は重量パーセントに換算する。それには,鉱物の分子比の値にそれぞれの鉱物の分子量をかければよい。ディオプサイド,ハイパーシーン,かんらん石は,Ca,Mg,Feのけい酸塩の成分がいくら含まれているかを表示した方がよい。

 

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5.偏光顕微鏡の理論

岩石鉱物Tで偏光顕微鏡の概略と鉱物の見え方を紹介した。ここでやや詳しくかつ系統的に説明する。

 

5.1結晶光学の基礎

複屈折

1669年バルトリヌス(デンマーク)は,1本の光線を方解石の結晶に入れると,屈折光線が二つに分かれることを発見。これが複屈折。一部(等軸晶系)の結晶をのぞき,ほかの結晶で呈する現象である。

 

偏光

光は進行する方向に垂直な平面内で振動する。通常はあらゆる方向に行われている。ところが,振動方向が限られている光があり,偏光という。

 

屈折率

媒質Aからもう一つの媒質Bへ光が入ると,光の振動方向が変化する。これを屈折という。投射角をθA,屈折角をθBとすれば,スネルの法則が成り立つ。

sinθA / sinθB = n

nを媒質Aに対するBの屈折率という。

ある物質の屈折率というときは,その物質の真空(空気中)に対する屈折率の意味である。

 

多色性

結晶は透過した光で何らかの色を呈することがある。偏光の振動方向によって違った色を呈することがある。それを多色性という。

 

 

5.2偏光顕微鏡概略

(a)歴史

16世紀末にオランダで発明。

17世紀に生物学で使われ,微細構造の観念を一変させた。

19世紀前半,本格的光学ガラスが用いられる。

19世紀,偏光が理解され,偏光をつくるニコルのプリズムが発明される。

1873年,ツィルケル「鉱物と岩石の顕微鏡学的性質」

  顕微鏡岩石学の成立をつげる労作

 

(b)偏光顕微鏡の構成

偏光顕微鏡は通常の顕微鏡に偏光板をとりつけたものである。

二つの偏光板を重ねて一方を回転すると90度ごとに暗黒になる。偏光板は光の振動方向を一方向にする性質があるので,偏光板二つの光の振動方向が直交すると光を通さなくなる。

偏光顕微鏡ではプレパラートの下と上にこの光の振動方向が直交するように偏光板を配し,上の偏光板は出し入れできるようにしてある。

上の偏光板を外した状態での観察を下方ポーラー(あるいは平行ポーラー)での観察,上の偏光板を入れた状態の観察を直交ポーラーでの観察をいう。

この観察を有効にするため,プレパラートを置くステージが回転できるようになっている。

このように普通の顕微鏡にない偏光顕微鏡の特徴は,偏光板を有することとステージが回転することである。

 

偏光顕微鏡の例(ウィキペディアより)

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/9/95/Leica_petrographic_microscope.jpg

 

5.3偏光顕微鏡での鉱物の見え方

デジタル顕微鏡を使って観察する。

http://www.ha.shotoku.ac.jp/~kawa/KYO/CHISITSU/dezital_henkoh/index.html

(岐阜聖徳学園大学理科教材より)

 

(a)下方ポーラー

屈折率

石英は平滑に見えるが,ざくろ石はザラザラして見える。

プレパラートのバルサムの屈折率に石英は近いが,ざくろ石は高いためである。つまりざくろ石の屈折率は石英のそれより高い。

(実習)顕微鏡をopenで観察

石英とザクロ石の見え方を比較する

 

多色性

鉱物の中には,方向によって色が変わるものがある。

(実習)顕微鏡をopenにしてステージを回転して色の変化を観察

黒雲母,角閃石,斜方輝石(色の変化は黒雲母や角閃石に比べ弱い)

 

(b)直交ポーラー

消光

ざくろ石は光学的等方体である。これを直交ポーラーで観察するとステージを回転しても常に暗黒である。

等方体以外の光学的異方体では,たいていは明るく見える。ステージを回転すると明るさが変化して1回転の間に4回全く暗黒になる。これを消光といい,その位置を消光位という。

(実習)顕微鏡をcrossで観察

ざくろ石 ステージを回転していつも暗黒であることを確かめる

石英   ステージを1回転して4回暗黒になることを確かめる

 

レターデーション

鉱物の屈折率の高い方をn2,低い方をn1とする。薄片の厚さdと薄片に垂直な方向の二つの屈折率の差 n2 - n1 との積,

R=d(n2-n1)

をレターデーションという。

屈折率の差が大きくなるとレターデーションが高くなる。通常の鉱物ではレターデーションが低いと灰色であるが,高いと鮮やかな黄,赤,青,緑となる。

石英はn2-n10.009,かんらん石は0.035-0.52

(実習)顕微鏡をcrossでレターデーションを観察

石英

かんらん石 

 

消光角

結晶は柱状であったり板状であったりする。柱の方向か板の底面の方向に平行なへき開があって,薄片ではその切断線が認められることがある。この直線の方向と消光の方向の角度を消光角という。

消光角は鉱物の同定や鉱物の組成の決定に役立つ。

消光角の測り方

Openにして,ステージを回転して鉱物の直線の方向を顕微鏡の十字線の方向(普通は縦方向)に合わせる。

Crossにして,暗黒になる(消光する)までステージを回転する。その角度が消光角である。45度より大きい場合と小さい場合があるが,小さい方の値をとる。消光角が0度の場合,直消光,そうでない場合,斜消光という。

(実習)次の鉱物のうち,どれが直消光でどれが斜消光か。

角閃石

単斜輝石

黒雲母

 

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6.鉱物の性質から岩石の成因をさぐる

鉱物はある温度圧力のもとでできる。そこで鉱物の産出からそれを含む岩石の形成条件を知ることができる。

 

6.1鉱物組合せから形成条件を知る

津西部の変成岩の例

泥岩起源の変成岩で,珪線石と紅柱石,白雲母のあるなしから変成作用の圧力や温度を語ることができる。

すなわち,現在見えている岩石が地下どのくらいにあってどの程度の温度だったかを知る。

津西部地域では,変成岩の鉱物組合せからABCの地域に分けられる。巨視的には南よりCBAとなる。

BCの地域では珪線石が産出

ABの境で珪線石と紅柱石共存

Aでは紅柱石が産出

ABでは白雲母が産出

Cの地域で白雲母は消失

 

変成作用で起きた反応

Al2SiO5の鉱物は,温度や圧力に違いで,藍晶石,珪線石,紅柱石となる

http://www2.city.kurashiki.okayama.jp/musnat/geology/rock/zougankoubutu/Al2SiO5.html

 

白雲母が消失する反応は次の通り。

 白雲母+石英=カリ長石+珪線石+水

 KAl3Si3O10(OH)2 + SiO2=KAlSi3O8 + Al2SiO5 + H2O

 この反応曲線はAl2SiO5の鉱物の珪線石と紅柱石の境界線を横切る。

 

実験でわかっている温度や圧力の違いによる鉱物の安定性から,津西部(変成岩のA,B,C)地域の温度圧力は4-4.5kb, 600-700℃となる。

 

このような解析が各地の変成岩で行われている。それらを総合して,変成帯の温度圧力型が求まる。

日本の地質区分で白亜紀の二つの変成帯,領家変成帯と三波川変成帯は温度圧力型が異なるものである。

領家変成帯(りょうけへんせいたい)(桃色) 1億年前(白亜紀)の高温低圧変成帯(もとはジュラ紀の付加体)

三波川変成帯(さんばがわへんせいたい)(紫色)1億年前(白亜紀)の低温高圧変成帯(もとはジュラ紀の付加体)

☆日本の地質帯(nue_3_swjapan)

 

6.2斜長石の双晶

鉱物の結晶学性質に双晶というものがある。

それは,特定の結晶面あるいは結晶軸に関して互いに対称的であるように2個の結晶が結合したもの。

2個体がある軸のまわりに180°回転して双晶ができるとき,この軸を双晶軸という。

2個体が一つの面で接合しているとき,その面を接合面という。

 

双晶の概念をマッチ箱で示す。

http://y95480.g1.xrea.com/twin.htm

 

ここの例のように斜長石双晶は,アルバイト双晶,カールスバッド双晶,アルバイト‐カールスバッド双晶,ペリクリン双晶,バベノ双晶などに分けられ,それらは偏光顕微鏡で容易に同定できる。

マグマ起源の岩石ではカールスバッド双晶やアルバイト-カールスバッド双晶を産するが,変成岩ではまれである。アルバイト双晶やペリクリン双晶は両者に含まれるが,ペリクリン双晶単独の産出は変成岩に限られる。

 

事例 

津西部の変成岩の斜長石双晶でペリクリン双晶の産出頻度をみると,変成度が高いC地域とB地域の多くで10%前後から30%前後であるが,B地域の一部とAの地域では,50%を超える。地域では北側の花こう岩に近づくとペリクリン双晶が多くなる。花こう岩の貫入によるせん断応力を受けてペリクリン双晶の頻度が高くなると解釈した。

 

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