「真岡-真壁-土浦」地域の地質(HTMLダイジェスト版)
第1図 地質図
PNG形式の地質図:https://www.gsj.jp/data/openfile/no0435/Chishituzu.png
凡例
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記号のうち,括弧内は真壁図幅(宮崎ほか,1996)の記号. |
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地質時代 |
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地質単元 |
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記号 |
岩相 |
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完新世 |
沖積層 |
谷底平野堆積物 |
a(a) |
礫、砂及び泥 |
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自然堤防堆積物 |
al(al) |
砂 |
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第四紀 |
後期更新世-完新世 |
山麓緩斜面及び扇状地堆積物 |
ps(sl,sh) |
巨礫及び砂 |
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後期更新世 |
低位段丘堆積物 |
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tl(tl) |
礫、砂及び泥 |
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中位段丘 |
常総層 |
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tm2(Jo,tm3) |
砂、礫及び泥 |
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堆積物 |
見和層 |
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tm1(tm2,Mi/Ki) |
砂、泥及び礫(主として海成) |
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中期更新世 |
高位段丘堆積物 |
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th(th) |
礫、砂及び泥 |
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上岩橋層 |
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Sh |
砂及び泥(主として海成) |
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友部層 |
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Tb(To) |
砂、泥及び礫(主として海成) |
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境林層 |
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Sk |
礫、砂及び泥 |
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新第三紀 |
前期中新世 |
茂木層 |
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Mt |
デイサイト火砕流堆積物及び安山岩溶岩 |
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安山岩及びデイサイト岩脈及び溶岩 |
An(An) |
安山岩及びデイサイト |
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加波山花崗岩 |
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Kg4(Ka4) |
極細粒白雲母黒雲母花崗岩 |
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Kg3(Ka3) |
優白色細粒ざくろ石含有白雲母黒雲母花崗岩 |
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前期古第三紀 |
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Kg2(Ka2) |
細粒白雲母含有黒雲母花崗岩 |
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- |
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Kg1(Ka1) |
中粒黒雲母花崗岩及び斑状(白雲母含有)黒雲母花崗岩 |
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後期白亜紀 |
稲田花崗岩 |
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In4 |
細粒黒雲母含有角閃石閃緑岩 |
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In3(In3) |
細粒白雲母黒雲母花崗閃緑岩 |
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In2(In2) |
中粒角閃石黒雲母花崗閃緑岩 |
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In1(In1) |
粗粒角閃石含有黒雲母花崗閃緑岩-花崗岩 |
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筑波花崗岩 |
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Ts6(Ts6) |
球状花崗岩 |
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Ts5(Ts5) |
細粒花崗岩類 |
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Ts4(Ts4) |
中粒白雲母-黒雲母花崗岩 |
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Ts3(Ts3) |
斑状黒雲母花崗閃緑岩及び粗流黒雲母花崗閃緑岩-花崗岩 |
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Ts2(Ts2) |
片状黒雲母トーナル岩 |
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Ts1(Ts1) |
細-中粒黒雲母角閃石閃緑岩-トーナル岩 |
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筑波変成岩類 |
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黒雲母帯 |
B |
白雲母黒雲母粘板岩 |
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及び吾国山変成岩類 |
菫青石帯 |
Cd |
菫青石黒雲母片岩、菫青石黒雲母ホルンフェルス、結晶質石灰岩及び変成チャート |
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珪線石帯 |
S |
珪線石黒雲母片麻岩及び珪線石黒雲母片岩 |
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斑れい岩類 |
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Gb(Gb) |
かんらん石斑れい岩、角閃石斑れい岩、斜長岩、コートランダイト、スペッサルタイト |
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ジュラ紀 |
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付加コンプレックス(八溝層群:笠間、 |
Js(ms) |
砂岩、泥岩を挟む |
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国見山、高取、鮎田ユニット。それに |
Jsm(mm) |
砂岩泥岩互層、泥岩、珪質泥岩及び混在岩 |
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筑波変成岩類と吾国山変成岩類の |
Jm |
塊状泥岩 |
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原岩) |
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Jc(mc) |
チャート |
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Jl(ml) |
石灰岩 |
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1.まえがき
茨城県と栃木県にまたがる八溝山地は,北から南へ八溝,鷲の子(とりのこ),鶏足(けいそく),筑波の4つの山塊からなる.北側の3つの山塊は主に中生代の堆積岩類からなり,南側の筑波山塊は,中生代の終わりから新生代の初めに形成された深成岩と変成岩類からなる.山地の周辺や平野部には,新生代の若い地層が分布している.
真岡・真壁・土浦地域には,これらのうち,鶏足と筑波の山塊が分布している.すなわち,八溝山地の中生代堆積岩類の南側部分と深成岩・変成岩類,それに平野部の新生界からなる.
本地域のうち,真岡及び土浦地域について,既存の地質図や表層地質図に基づき,若干の新たな現地調査結果を加えて5万分の1地質図精度で編集した.両地域の間の真壁地域は地質図幅(宮崎ほか,1996)として出版されているので,あわせて参照することにより鶏足から筑波山塊及び周辺の平野部の地質を理解できる.以下の説明では本地域全般の概略を紹介した.
2.鶏足山塊の中生代堆積岩類(堀・指田,1998)
鶏足山塊の中生代の堆積岩類は,海洋の深い所でできた岩石や浅い所でできた岩石が一つの単位となって,大陸の縁にまで運ばれて大陸の一部となったものである.付加体と呼ばれ,古いものから新しいものが順に堆積して地表に現れた地層とは異なるため,一般的な「〜層」の代わりに「〜ユニット」と記述する.
鶏足山地の堆積岩類は,笠間ユニット,国見山ユニット,高取ユニット,鮎田ユニットからなる.笠間ユニットは,砂岩泥岩互層を主としてチャートや凝灰岩をわずかに伴う.国見山ユニットは塊状の砂岩と砂岩頁岩互層からなる.高取ユニットはチャートと砕屑岩からなり,下から順に,砥石型頁岩,層状チャート,珪質頁岩,砕屑岩(主に砂岩)からなる. 鮎田ユニットは,主に砂岩頁岩の互層からなる.これらのユニットは断層で接している.
これらの中生代の堆積岩類は,岩石の特徴や地質時代から西南日本の丹波,美濃,木曽地域に分布する同様の堆積岩類と一続きのものに対比される.すなわち,中生代のジュラ紀に形成された付加体である.
3.変成岩類(宮崎ほか,1996)
筑波山塊の東に吾国山変成岩類,南に筑波変成岩類が分布している.これらは後期白亜紀から古第三紀の初めにかけて高温低圧の変成作用を受けたものである.もともとの岩石は,鶏足山地の中生代堆積岩類と同様の岩石でジュラ紀の付加体堆積物である.これらの変成岩類は,西南日本の領家変成岩類の延長と考えられている.上部(主に吾国山変成岩類の原岩)は,泥岩,砂岩,チャート,石灰岩からなる.下部(主に筑波変成岩類の原岩)は,泥岩及び泥岩砂岩互層からなる.変成鉱物の解析から,筑波変成岩類の方が吾国山変成岩類よりも高圧で形成されたと考えられている.
写真1 筑波変成岩(平沢)
4.深成岩類(宮崎ほか,1996)
深成岩類は後期白亜紀斑れい岩類と古第三紀前半の花崗岩類からなる.花崗岩類は領家帯と山陽帯の東方延長部と考えられている.斑れい岩類は花崗岩類に貫かれ熱変成作用を被っている.斑れい岩のK-Ar年代値は75Maで,花崗岩類の60Ma前後よりもいくらか古い値を示す.筑波山に分布する斑れい岩は,かんらん石斑れい岩,角閃石斑れい岩,斜長岩,コートランダイト,スペサルタイトなどさまざまな岩石からなる.
写真2 斑れい岩(男体山)
花崗岩類は,花崗岩類同士の貫入関係,岩相,周囲の変成岩類との関係から,筑波花崗岩,稲田花崗岩,加波山花崗岩に分けられている.筑波花崗岩の主な岩相は,斑状黒雲母花崗閃緑岩,片状黒雲母トーナル岩,白雲母黒雲母花崗岩,細粒花崗岩類である.菫青石含有球状岩が斑状花崗閃緑岩中に産する.稲田花崗岩は,主に粗粒普通角閃石含有黒雲母花崗岩,中粒普通角閃石黒雲母花崗閃緑岩,細粒白雲母黒雲母花崗閃緑岩からなる.加波山花崗岩は,主に,中粒黒雲母花崗岩と細粒白雲母含有黒雲母花崗岩からなる.
写真3 稲田花崗岩(稲田)
5.中新世安山岩及び火山砕屑岩(吉岡ほか,2001)
安山岩岩脈が筑波山塊の変成岩類や花崗岩類に貫入していて,そのK-Ar年代は中新世の火山活動を示している.茂木層は,真岡地域に分布していて,デイサイト火山砕屑岩と安山岩溶岩からなる.
写真4 火山砕屑岩(磯山)
6.第四系(吉岡ほか,2001)
第四系は,境林層,友部層,上岩橋層,美和層,常総層,段丘堆積物,斜面堆積物,沖積層からなり,丘陵や低地に分布している.境林層は礫,砂,泥からなる.友部層は中期更新世の海成堆積物からなる.美和層は砂及び礫からなり,南関東の下末吉層や木下層に対応する.常総層は後期更新世の非海成堆積物である.
写真5 友部層
段丘は高位,中位I,中位II,低位に区分できる.高位段丘は中期更新世に,中位及び低位段丘は後期更新世に形成された.中位IとIIの段丘堆積物は,美和層と常総層にそれぞれ対応する.斜面堆積物は山の斜面に分布する.沖積層は主要河川沿いの低地に分布している.
文献(地質図編集に利用したもの)
・堀 常東・指田勝男(1998)八溝山地鶏足山塊の中生界.地学雑誌,107,493-511.
・宮崎一博・笹田政克・吉岡敏和(1996)真壁地域の地質.地域地質研究報告(5万分の1地質図幅),地質調査所,103p.
・吉岡敏和・滝沢文教・高橋雅紀・宮崎一博・坂野靖行・柳沢幸夫・高橋 浩・久保和也・関 陽児・駒澤正夫・広島俊男(2001)20万分の1地質図幅「水戸」(第2版),地質調査所.
・茨城県(1983)土地分類基本調査 土浦.国土調査,52p.
・茨城県(1993)土地分類基本調査 真岡・壬生.国土調査,55p.
・栃木県(1990)土地分類基本調査 真岡.国土調査,48p.