地質学と環境(特に気候変動)

T環境史と人類の活動

・地球史の中での気候変動

・人類の歴史の中での気候変動

・鉱物資源の開発史

U気候はどのようにして決まるか (U章へ リンク)

  ・気候システム(大気、海洋、陸上とのやりとり)

  ・地球の自転軸や公転軌道の変化

  ・太陽活動、宇宙線、火山活動

V気候変動とその対処  (V章へ リンク)

  ・IPCCの予想

  ・対応策

  ・対処技術

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・地質学とからめ、温暖化を中心に環境問題を展開する。

・前職の地質調査機関での環境関連業務の内容をまぜる。

・環境に関する政策や法律についてはふれない。

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参考文献

伊藤公紀(いとう・きみのり) 「地球温暖化」 日本評論社、2003年、209p

鬼頭昭雄(きとう・あきお) 「異常気象と地球温暖化」 岩波新書、2015年、208p

鎌田浩毅(かまた・ひろき) 「知っておきたい地球科学」 岩波新書、2022年、239p

気象庁 IPCC第6次評価報告書.

https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/ipcc/ar6/index.html

技術要約 112ページ

概要 60ページ

政策決定者向け要約 33ページ、要点が太字

よくある質問と回答 72ページ

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T環境史と人類の活動

T-1 地球史の中での気候変動

地質時代区分

かたい骨格をもった多細胞動物が多数出現したときを境界とし,それより前を隠生累代(いんせいるいだい)または先カンブリア時代といい,それ以降を顕生累代(けんせいるいだい)という。

隠生累代は,地質年代値の数値で区切られ,古い方から冥王代(めいおうだい),始生代(しせいだい),原生代(げんせいだい)に区分される。

顕生累代は,代表的な動物群を基準に,古生代(こせいだい),中生代(ちゅうせいだい),新生代(しんせいだい)に区分される。

代,時代

() (先カンブリア時代は代)

生物界

 

新生代

           

第四紀  (完新世/更新世)

新第三紀 (鮮新世/中新世)

古第三紀 (漸新世/始新世/暁新世)

哺乳類(ほにゅうるい)の時代/被子(ひし)植物時代

 

中生代

           

白亜紀

ジュラ紀

三畳紀

爬虫類(はちゅうるい)の時代/裸子(らし)植物時代

古生代

 

ペルム紀/石炭紀/デボン紀/シルル紀/オルドビス紀/カンブリア紀

両生類,魚類の時代/無脊椎動物の時代

先カンブリア時代

原生代/始生代/冥王代

 

主な放射年代:古生代の始まり541,中生代の始まり252,新生代の始まり66(単位は百万年前)

 

先カンブリア時代 生物が隠れているという意で隠生累代(いんせいるいだい)ともいう。

冥王代(46-40億年前) 地球誕生の初期,地球表層ではすべてものがとけたマグマオーシャンの時代だった。

始生代(40-25億年前) 温度が下がり,雨が降るようになる。原始海洋が形成,原始的な生物(細胞)が誕生した。

原生代(25-5.41億年前) シアノバクテリアのはたらき(光合成)で酸素が増加,そのため複雑な生物も出現。

原生代末の生物(化石) デッキンソニア(ウィキペディアより)

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/f/fb/DickinsoniaCostata.jpg

 

以下の古生代,中生代,新生代を生物が見える意で顕生累代(けんせいるいだい)という。

古生代(5.41-2.52億年前)  古生代になり突然かたい骨格をもった動物が多数出現(カンブリア紀の爆発)。三葉虫などの無脊椎動物の時代,魚類の時代,両生類の時代と生物は進化し,海から陸へ進出する。

・前期:初期には目が5つある動物(オパビニア)など多彩だったが環境に適合せず淘汰。三葉虫や筆石が繁栄した。

・中期:陸上植物出現。海では魚類が栄え,陸でも生活する両生類が誕生する。

・後期:大森林の発達(リンボクなど)。浅海では紡錘虫(フズリナ)が繁栄した。

中生代(2.52-6600万年前) 概して温暖,爬虫類(はちゅうるい)の時代。特に恐竜が繁栄し,恐竜から進化して鳥類が誕生。初期の鳥類の始祖鳥(しそちょう)は有名。

始祖鳥 中生代半ばの後期ジュラ紀の地層から発掘。

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d6/SArchaeopteryxBerlin2.jpg

鳥の特徴と爬虫類の特徴を有する(ウィキペディアより)

新生代(6600万年前‐現在) 寒冷な気候,哺乳類(ほにゅうるい)の時代。人類が発展する。

・前半:はじめは温暖,貨幣石(ヌンムリテス)が海底に住む。寒冷化が始まると哺乳類(ほにゅうるい)が発展するようになる。

・後半:寒冷化が進む。人類が出現する(例 ジャワ原人)。氷期と間氷期がくりかえす。

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以上の流れで注目すべき事変は次の通り。

・光合成の開始と酸素の増加

・地球全球凍結

・古生代の生物大量絶滅

・中生代の生物大量絶滅

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ややくわしくみてみる。

氷河時代 

氷河時代は大規模な氷床が存在した時代、その中に氷期と間氷期がある。現在は氷河時代の間氷期になる。

・原生代初期 24.5億年前-22.2億年前

・原生代末 7.3億年前-6.4億年前

・古生代 オルドビス紀後期4.6億年前、石炭紀後期3億年前

・新生代 4300万年前-現在

種の大量絶滅

・古生代末 海生動物の96%が絶滅、大陸での大量の玄武岩溶岩噴出が原因

・中生代末 恐竜、アンモナイト、海生動物多数が絶滅、巨大隕石衝突

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T-2 人類の歴史の中での気候変動

74000年前インドネシアトバ火山の巨大噴火(トバカルデラ)

 平均気温10度下がる

 人類の総人口が1万人から3000人に減る 

1-5000年前(完新世中期)近日点に北半球の夏が来る

 北半球の夏がより暖かく、冬により寒くなる

 その間に大陸氷床が解ける。

6000年前縄文時代に海面が上がるのは?

 氷床が解け地殻は上昇、解けた水が集まり海洋底に圧力がかかる、

 海洋底下のマントルが大陸の下へ、陸地が押し上げられる

 日本列島が隆起して海面が上がったように見える

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中世気候異常期

 中世温暖期 西暦950-1250

 ヨーロッパでは温暖、グリーンランドに入植

 ヨーロッパを中心とする地域的現象と最近は考えられている

小氷期 西暦1450-1850

 英国のテムズ川やオランダの河川が凍結

 日本でも飢饉が頻発

 太陽活動不活発、火山活動活発

テムズ川凍結(ナショナルジオグラフィック日本版)

https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/4984/

 

インドネシア、ジャワ島東のスンバワ島タンボラ火山噴火

 181545日、突然の噴火、噴煙は高度3万mに立ち昇る

 翌年、北米東岸平均気温が例年より4℃低い、6月に雪

 8月、霜でトウモロコシ全滅

 カナダのハドソン湾は夏に凍りつき船の出航できなかった

タンボラ火山(ナショナルジオグラフィック日本版)

https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/15/041500050/

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2000年間のまとめ 鬼頭昭雄(2015)に基づく

19世紀に至るまで一貫して長期的な寒冷化が認められる。

20世紀になると南極を除き温暖化に転じる

19世紀以前の数十年から数百年の変動は、大規模な火山噴火時や太陽極小期にあたる。小氷期や中世気候異常期は地域間で一致しない。

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T.3 鉱物資源の開発史

世界中の国が生活水準の向上をめざし,鉱物資源などの原材料需要が増えている。

(1) 人口増加,収入増加,生活水準の向上によって「エネルギー・原材料需要が指数関数的に増加している。

(2) 最貧国国民の生活向上のため,エネルギー・原材料消費が増加している。

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金属資源消費拡大の例 銅

銅は身近な生活の中で大量に使われている。開発の歴史は古く,現在でも社会を支える資源として大量に生産されている。

1900年から最近に至るまでに世界の人口は4倍となった。銅の生産量は38倍となり,一人あたりの消費量は1世紀余りの間に約9倍となる。

二つの鉱床タイプが世界の銅の8割を供給している。6割が斑岩銅鉱床,2割が堆積性層状規制銅鉱床である。

 

世界の銅鉱床

 

グラフ, 折れ線グラフ

自動的に生成された説明

銅の生産量と人口の変遷 (Price, 2016)から1900年から2014年では次のようになる。

・世界の人口は4倍になった。

・銅生産量は38倍になった。

・1人当たりの消費量は約9倍となる。

・最近の生産量は,2019年2040万トン,2020年2060万トン,2021年2100万トン。

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エネルギー消費

エネルギー消費ののびはどうなっているか。

次の資料でわかるように、18世紀から19世紀の産業革命、1950年から1960年にかけての石油利用拡大の時期に消費が急に伸びている。

資料 世界のエネルギー消費量と人口の推移 (資源エネルギー庁111-1-1図)

https://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2013html/1-1-1.html

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新産業創出とその波及効果

産業構造の変化で新産業が生まれる。例えば,持続可能な発展のために化石燃料から再生可能エネルギー利用に進み,新産業が生まれている。そのためにいままで使っていなかったあらたな資源が必要となる。再生可能エネルギー利用が叫ばれ,新産業が生まれ,さまざまに波及する。

・風力発電:本体の構造物,発電機,強力磁石,設置場所の送電網整備等々に波及する。 

・ソーラーパネル製造と太陽光発電:パネルの原料のシリコン確保,蓄電池,送電網整備など。

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あらたな鉱物資源の需要

新産業のためにあらたな鉱物資源が必要となる。持続可能な社会実現のため,低炭素エネルギーへ移行し,そのためのインフラストラクチャーは多くの新たな原材料を必要とする。その例を羅列してみる。

・大量の構造物用鉱物資源 インフラ整備で従来同様にFe(), Cu(), Pb(),セメント ,

・ハイテク用の鉱物 Sb(アンチモン), Co(コバルト)

・風力発電タービンのモーターの強力磁石 REE (希土類)

・電極薄膜のGa(ガリウム), In(インジウム), Se(セリウム)

・ハイブリッドまたは電気自動車バッテリーのLi(リチウム)

・燃料電池で使われるプラチナ族金属(PGMs)

 

風力発電のしくみ(関西電力グループ)

http://media.kepco.co.jp/_ct/17524643

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地球史46億年を1年にたとえると

鉱物資源やエネルギーの消費は急速に増えている。地球の歴史の上でそれはどんなことか、46億年を1年にたとえて実感してみる。

「地球の歴史を1年にたとえると,産業革命はいつのことか,1年の終わりの何秒か」

地球の歴史の始まりを46億年前,産業革命を300年前とする。

人類の出現/地球の歴史

300/46億年=0.0000000652,そこで46億年を1年にたとえると、1年=365日=36524(時間)8760時間=87606060()31,536,000秒だから

31,536,000秒x0.00000006522.06

地球誕生から現在までを1年にたとえると、産業革命は1231日午後115958秒、つまり新しい年になる2秒前になる。

最後の最後になって一気にそれまで地球に作られた鉱物資源やエネルギー資源を使っている。

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