V気候変動とその対処
・IPCCの予想
・気候変動の影響
・対応策と対処技術
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V気候変動とその対処
V.1 IPCCの予想
IPCC 気候変動に関する政府間パネル
(Intergovernmental Panel on Climate Change)
最近の気象
日本の気温や降水量の最近の特徴をみる。
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日本の平均気温は100年で1.14℃上昇
https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/temp/an_jpn.html
気象庁 日本の平均気温
都市化の影響の少ない15地点の観測結果を利用
(網走、根室、寿都、山形、石巻、伏木、飯田、銚子、境、浜田、彦根、多度津、宮崎、名瀬、石垣島)
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日本の降水量は、最近、大雨の頻度が増えた。無降水の日数は減るが、総降水量は変わらない。
https://cigs.canon/article/20220802_6903.html
降水量100o以上の日数
キャノングローバル戦略研究所が気象庁のデータを編集
一日の降水量が100ミリ以上の日数は100年間で25%増えた。一方、降水日数は100年間で10日減った。
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日本の気候がどうなるか
気象研究所、二酸化炭素を温暖化要因として予想
21世紀半ばまで排出量は増加、ピークを迎えてあと、緩やかに減少
2100年ごろは700ppmに達すると想定
全球気候モデルから世界の平均地上気温の上昇は2.8℃
不確実性を考慮した上昇量は1.7-4.4℃
2.8℃で日本の気候を予測する
2100年の天気予報 (マイベストプロ)
https://mbp-japan.com/aichi/appare-kaigo/column/5041388/
減る真冬日、増える猛暑日
大雨が多くなり、短時間強雨
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都市化の影響
将来の都市シナリオを考える
分散型都市 駅と住居を分散、自動車に依存
集約型都市 駅から1q以上離れた地域の住居を減らす、自動車の利用を禁じる
夏の夜 分散型は0.3℃高くなる、集約型は0.1℃低くなる
乾燥する都市
ヒートアイランド、緑地がアスファルト化で温度がこもる、蒸発での気化熱なくなる
気温上昇で飽和水蒸気圧が増加、植物少なく水蒸気の増加は少ないので相対湿度減少
(逆もある?)
都市化で昇温、気圧が下がる
周囲から都市へ水蒸気集まる、その結果都市域で雨増える
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雪が減る
台風全体の数は減るが、強い台風が増える
台風がもたらす大雨が増える
熱波が厳しくなる
2100年の天気予報 絵本ナビスタイル
https://style.ehonnavi.net/manabi/ecorepo/2015/12/11_001.html
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V.2 気候変動の影響
予想される影響
水循環変化
氷河縮小 下流の水資源に影響
高緯度地域 永久凍土の温度上昇や融解
自然生態系
過去に気候変動で種の絶滅あるが、現在は変動のスピード早く適応しきれない
二ホンジカやイノシシの分布が広がる
農作物
高緯度でも農業可能
二酸化炭素が光合成の原料に
コメの品質低下
家畜の死亡
人の健康
生物分布変わり感染症の拡大
熱中症増大
熱中症死亡者数 国立環境研究所
https://www.nies.go.jp/kanko/kankyogi/32/10-11.html
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気象・気候
熱波、干ばつ、洪水、台風、山火事
これらから不平等・貧困を増長
ハザードに対する脆弱性の差やリスクの差がある
暴力的紛争を招く
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V.3 対応策や対処技術(二酸化炭素を主因としたIPCCの立場から)
緩和策 温室ガス排出抑制や削減
省エネルギー、再生可能エネルギー、森林(吸収源対策)
二酸化炭素の回収・貯蔵
適応策 社会再構築で影響を軽減
渇水対策、治水対策、感染症対策
農作物の高温対策、生態系の保存
※今後数十年の温暖化の進行はどの緩和策をもっても不可避
そこで適応策で対処、「待った」が利かない
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石炭消費と二酸化炭素
ここで毎年石炭からどれだけの二酸化炭素が生成するかを計算する
・石炭を消費(燃焼)するとどのくらいの二酸化炭素となるかを求める。
・地球の大気の量を求める。
・排出した二酸化炭素と大気中の割合を求める
以下段階を追って計算してみる。質量という言い方を使っているが,わかりやすいように重さと言い換えてもよい。
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・石炭1グラムあたりの炭素量を0.8
グラム と仮定して発生した炭素量を得る。
・炭素1あたりの二酸化炭素量は,原子量が炭素12,酸素16なので,(炭素+酸素+酸素)÷炭素=(12+16+16)/12=3.67となる。石炭1gからは,3.67x0.8=2.936gの二酸化炭素ができる。
・2021年の石炭消費量(生産量)は約80億トン、すると,80億トン
x 2.936=235億トン。これは石炭を燃焼して生まれる二酸化炭素量。
(世界全体での二酸化炭素総排出量は314億トン(2020年)なので,石炭は二酸化炭素全排出量の4分の3を占める。)
・単位面積(1平方m)あたりの大気の質量は,
平均的な気圧は1013hPa(ヘクトパスカル)=10.13x104Pa(パスカル)
また1Pa=1xN(ニュートン)/平方m
=1xkg/m x s2 ,重力加速度9.8m/s2なので
10.13x104 (kg/m x s2)÷9.8(m/s2)=1.0x104 (kg/m x s2)
・あるいは,かつて使われていた1気圧が水銀柱の高さ76cmで考えると直接的でわかりやすい。水銀の密度は13.6g/cm3なので1平方mにかかる大気の質量を水銀で換算すると,
13.6x76x10000(cm2,1平方m)=10336000g/平方m=10336kg/平方m,簡単には1万kg=10トンとできる。
・地球の表面積は地球の半径6400km=6,400,000mから,
球の表面積=4 x 円周率(3.14)
x 半径の2乗=4x3.14x6,400,000m(の2乗)=5.1x1014平方m
・地球全体にかかる大気の質量は,
10トン/平方m x
5.1x1014平方m=5.1×1015トン
質量での比
二酸化炭素の質量は235億トン
大気の質量は5.1×1015トン=5.1×107億トンだから,
増えた割合は161÷5.1×107=31.6×10-7=3.16×10-6
モルでの比(濃度となる)
発生した二酸化炭素のモル数
C=12, O=16なので,分子量は12+16x2=44
二酸化炭素排出量をモルで表すと,
235億トン÷44=235x10
14グラム÷44=5.34x1014モル
大気のモル数は,大気が窒素8割,酸素2割とした大気1モルの質量で割ればよい。
窒素は14x2,酸素は16x2が分子量なので,
5.1×107億トン÷
(0.8x28+0.2x32) = 5.1x1021グラム÷28.8=0.177x1021モル
=1.77x1020モル
二酸化炭素と大気のモル比を求める
5.34x1014モル÷1.7720モル=3.0x10-6,すなわち,「3.0ppmの増加」である。
石炭由来の二酸化炭素だけでも3ppm増加する。実際には植物に吸収される分などあり,観測される二酸化炭素はもう少し小さな値である。
二酸化炭素総排出量の割合の多い石炭の利用が半減すると,目に見えて二酸化炭素の増加が鈍ることになる。
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二酸化炭素が増えるとなぜ温暖化となると考えられているか?
太陽から地球に太陽光線が届く。地表はその太陽光線を吸収し,赤外線を放出。地表から放出された赤外線がそのまま全部宇宙に出ていってしまうと,地球は寒い星になってしまう。ところが地球の大気には赤外線を一部閉じ込めてくれる温室効果ガスがあり適度な気温となっている。
この温室効果ガスが増えつつあることが問題。宇宙に放出せず,地球にとどまる赤外線が多くなると,地球全体の平均気温が上がる。これが「温暖化」。
温室効果ガスには数種類あるが,二酸化炭素が温暖化にもっとも多く寄与している。
地球温暖化とは(日本ガス協会)
https://www.gas.or.jp/kankyo/taisaku/ondanka/
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二酸化炭素増加対策には,石炭火力発電以外の発電方法に変えていくことが考えられる。
石炭火力以外の発電で二酸化炭素排出を抑える。それぞれ長所短所がある。
・太陽光発電 (長)資源枯渇ない (短) 太陽が出ないと発電できない
・地熱発電 (長)日本など火山国では資源豊富 (短)温泉が枯れる心配
・風力発電 (長)資源枯渇がない (短)風が吹かないと発電できない
・水力発電 (長)クリーンなベース電源 (短)ダム建設で環境改変
・原子力発電 (長)CO2排出少ないベース電源 (短)放射能の管理
・省エネルギー エネルギー効率の良い製品を使う,少しでも消費を抑える
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二酸化炭素固定
自然界の少々の二酸化炭素は,光合成など生物により吸収される。現在はそのバランスがくずれ,吸収しきれず大気中の二酸化炭素が増えている。二酸化炭素除去のため多くの施策が考えられている。
二酸化炭素固定化や有効利用 (経済産業省同技術に関する施策評価資料から抜粋)
大規模排出源からの二酸化炭素排出削減技術 |
CO2分離回収技術 CO2隔離 地中貯留 CO2隔離 海洋隔離 変換・有効利用 炭素への分解 変換・有効利用 化学品へ変換 |
例:膜分離 例:枯渇油・ガス田貯留 例:深海底貯留隔離 例:プラズマ分解 例:高分子合成法 |
大気中の二酸化炭素濃度低減技術 |
植物による吸収 大規模植林による地上隔離 植物による吸収 海洋植物による吸収 動物による吸収 |
例:乾燥地帯植林 例:大型海藻育成 例:珊瑚礁造成 |
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二酸化炭素地中貯留
二酸化炭素削減技術として,化学・工学的に二酸化炭素を分離回収し,貯蔵・利用する手法がある。二酸化炭素を地中に固定化してとりのぞくのである。
気体として大気中に放出された,あるいは放出される直前の二酸化炭素を集め,地中・水中などに封じ込める。
二酸化炭素地中処分
二酸化炭素貯留の模式図(ウィキペディア)
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/b/b5/Carbon_sequestration-2009-10-07.svg
二酸化炭素地中貯留(東北大学伊藤研究室)
http://www.ifs.tohoku.ac.jp/geo/about/ccs.html
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二酸化炭素地層処分(固定)の現状
・現状
15から20程度の大規模なCCSプロジェクトが行われているが,多くは液化した二酸化炭素を堆積盆,石炭層,枯渇した油田やガス田,岩塩層に注入している。
この技術で障害となるのは,高い経費,二酸化炭素注入と地下貯蔵に関する技術的課題,地下に注入された二酸化炭素のもれだし,法的に残っている不確かさがある。
・課題
従来のCCSでは,不透水層を帽岩とした地質構造上の空間が必要である。さらに二酸化炭素が地層中の孔隙水に溶け,浮力で上昇し地層から大気中にもれることを防止する必要がある。これには百年から数千年の長期にわたった手当てが必要である。
この課題解決のために,二酸化炭素を気体や液体でなく,固体として固定する手法がある。
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地層処分の最近の話題
火山岩に二酸化炭素を注入して固定化する技術が注目されている
参考文献 Kate S. Zalzal
Burying the sky:
Turning carbon dioxide into rock. Earth, June 2, 2017
アイスランドのヘリシェイデイ発電所では,CO2(二酸化炭素)を石に変えて地球に戻す計画に取り組んでいる。世界初となるCO2を岩石に変換する試みでは,CO2を玄武岩に吸収させて硬い岩石(鉱物)に変えるのだが,予想以上にその速度が速いことがわかった。
アイスランド:
CarbFixの試み
地熱発電所とアルミニウム精錬所からの排ガスを減らしたい。
アイスランドの岩石は,帽岩がなく,若い玄武岩が主である。このため,割れ目など孔隙が多く,二酸化炭素だけ注入しても大気に抜けて出してしまう。CarbFixでは,二酸化炭素とともに水を注入して,二酸化炭素に飽和した水を送り込むようにした。
酸性の二酸化炭素に飽和した水は,直ちに玄武岩と反応始めた。水が玄武岩の割れ目や孔隙を移動する間に,玄武岩中のカルシウム,マグネシウム,鉄イオンと二酸化炭素は,しきい値に達し,炭酸塩鉱物が沈殿始める。硫化水素ガスも水に溶けていて,玄武岩と反応して黄鉄鉱を形成した。
二酸化炭素を固定した試料(ウィキペディア)
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/6c/CarbFix_core.png
予想よりも早くガスが鉱物化することがわかった。ガス注入後,2年以内に二酸化炭素の95%以上が地下で鉱物化することがわかった。
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