U気候はどのようにして決まるか
・気候システム(大気,海洋,陸上とのやりとり)
・地球の自転軸や公転軌道の変化
・太陽活動,宇宙線,火山活動
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U気候はどのようにして決まるか
U.1 気候システム(大気,海洋,陸上とのやりとり)
太陽から地球に1370w/m2(約1kw)のエネルギーが来る。夜がある,斜めにあたることでその4分の1の340wが届く。100wが反射され,240wを吸収する。同じ240wを放射して差し引き0になる。
このままだと-18℃になる。地上5qではこの温度になる。地上では温暖化ガスがあり,赤外線を吸収して15℃の適度な温度になっている。
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/7/72/NASA_earth_energy_budget_ja.gif
地球のエネルギー収支(ウィキペディアより,原図はNASA)
ここで温暖化ガスがないと地球は-18℃になることを計算で求めてみる。
地球放射収支
吸収する日射量
地球の半径をrとすると地球の断面積はπr2,
太陽の放射エネルギーは太陽定数S0とすると,
地球が受け取る放射エネルギーはS0πr2。
アルベド(総合的反射率)をaとすると,反射しない分は1-aである。
したがって吸収日射量は,S0πr2(1-a)となる。
放射量
温度Teに応じた放射(黒体放射)は,σTe4,
ここでσはステファン・ボルツマン定数で物理量として求まるもの。σ=5.67×10-8 W/m2/K4。
地球の表面積は4πr2,
吸収日射量と放射量が等しくなるので
S0πr2(1-a)=
4πr2σTe4
S0 (1-a)=
4σTe4
Te4=S0(1-a)/4σ
S0=1368W/m2,a=0.3なので
Te=255K=-18℃
温室効果がないときの地球の平均気温である。
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気候変動
気候変動は,気候システム内部と外部の要素の作用で決まる。
・太陽からのエネルギーは太陽自身の活動や地球の軌道によって,変化する。
・火山が噴火すると硫酸ガスなどのエーロゾルが放出され,それが太陽光を反射する。
・森林火災,工場や火力発電所によってもエーロゾルが大気に増加する。
・森林破壊で地球表面の日射の反射量に影響を及ぼす。
・工業化で大気中の二酸化炭素が増え温室効果を強める。
・温暖化で海水の蒸発が進み水蒸気が増える。温暖化ガスの役割を果たす。
・水蒸気が増えると,雲が増えて太陽のエネルギーを反射することもある。
https://www.mri-jma.go.jp/Research/project/M/M_2019-2023_2.html
気候システム要素図(気象庁気象研究所地球システム)
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エルニーニョ現象
気候システム内部の例として,エルニーニョ現象がある。
https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20200623/se1/00m/020/057000c
エルニーニョ現象 エコノミスト(鎌田 役に立つ地学)より
エルニーニョ現象のない通常の年は,太平洋中央部で東風(貿易風)が吹いている(図の上)。この時,赤道付近の海の表面にある温かい海水は,貿易風に動かされて西へ吹き寄せられる。
年によっては貿易風が著しく弱まることがあり,栄養分に富む深層水の湧き上がりが止まって魚が取れなくなる。こうした現象をペルーの漁師たちは神様が与えてくれた休みと考え,エルニーニョ(スペイン語で「神の(男の)子」)と呼んだ(図の中)。
反対に,貿易風が平年よりも強く吹くことで起きる「ラニーニャ現象」がある。ラニーニャはスペイン語で「女の子」という意味だが,深層水が例年よりも大量に上がって海水温が通常の年よりも低くなる(図の下)。
エルニーニョと日本の冷夏
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/476628/
西日本新聞 2018/12/31
エルニーニョ現象は最初,太平洋の赤道付近の熱帯域で発生するが,時間とともに中緯度や高緯度地域にも広がっていく。日本では梅雨が長引き,冷夏となったり台風が減少したりする。一方,冬は西高東低の気圧配置が弱まることで暖冬になりやすい。
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U.2 地球の自転軸や公転軌道の変化
公転軌道
10万年周期,40万年周期
円に近い楕円から平べったい楕円と変化する。
近日点 太陽に近い
遠日点 太陽から遠い
今は近日点が1月上旬,遠日点が夏至のころ,そこで夏と冬の気温差が小さい
9000年前,近日点と夏至の時期が近かった,北半球の夏は今より暑い
地球の公転 井上毅(ツィート)
https://twitter.com/INOUE_Takeshi_/status/646651105623977985
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自転軸の首振り運動
2.6万年周期
国立天文台 暦
https://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/wiki/BAD0BAB9.html
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自転軸の傾き
4.1万年周期
現在は23.4度,22.1-24.5度と変化する
傾きが大きいと,夏はより暑く,冬はより寒い
日本気象協会 四季
https://tenki.jp/suppl/grapefruit_j02/2022/03/20/31027.html
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U.3 太陽活動,宇宙線,火山活動
太陽の活動が変化して,その結果,地球へ届くエネルギーが変化する
太陽黒点
https://kotobank.jp/word/%E9%BB%92%E7%82%B9-64134
太陽黒点(コトバンク)2014/10/23
古代ギリシャ人「黒点が少ないときは湿っぽく雨が降りやすい」
黒点の望遠鏡による観測は,1700年からある,1600年からには初期データがある
それによると,黒点数と北半球平均気温の変化が対応する。
https://pixy10.org/archives/605799.html
気温と黒点(吉田まろHP)
黒点数は太陽の2800MHz高周波強度と一致している
そこでこの強度を利用して気温の変化をみることも多い
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黒点数変化の周期
周期は11年と言われているが,実は10-14年と幅がある。
太陽の活動が活発になると周期は短くなる。
黒点変動周期と気温
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太陽風や宇宙線
太陽風 太陽から噴き出す高温で電離した粒子(プラズマ)。
(ウィキペディアより)
銀河系内の宇宙線も地球に降り注ぐ
これら太陽風と宇宙線のエネルギーは大きく電離層に影響を与える
宇宙線の中性子線強度と黒点変化(宇宙線観測所)
https://www.icrr.u-tokyo.ac.jp/prwps/common/muon/figures.html
太陽風(磁場)が強くなると地球への宇宙線が減る。
すると雲の量が減り,地球の気温が上がる。
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火山
歴史で記したことと重複するが,タンボラ火山の例を記す。
インドネシア,ジャワ島東のスンバワ島タンボラ火山噴火
1815年4月5日,突然の噴火,噴煙は高度3万mに立ち昇る
翌年,北米東岸平均気温が例年より4℃低い,6月に雪
8月,霜でトウモロコシ全滅
カナダのハドソン湾は夏に凍りつき船の出航できなかった
タンボラ火山(ナショナルジオグラフィック日本版)
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/15/041500050/
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過去の気温がどうやってわかるか
温度計の代わりに使う指標
樹木の年輪
花粉化石
サンゴ
洞窟内の石筍や氷筍
湖沼堆積物
海底堆積物
氷床下の氷
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同位体で定量化
同位体とは
元素をつくる原子の原子番号は陽子数,
その原子の質量数は陽子数と中性子数の和,
中性数が異なれば質量数が異なり,同位体という。
酸素はO16が主でO17とO18がわずかにある。
酸素の同位体
http://shochou-kaigi.org/interview/interview_72/
国立大学研究所紹介(東京大学大気海洋研究所)
水分子H2Oについて
分子量
水素の同位体とO17を無視して,水の分子量は次のようになる。
分子量18 O16+H2
分子量20 O18+H2
海から水が蒸発するとき,軽い水の方が蒸発しやすい。
雨や雪の水と海水の酸素の同位体組成が異なる。
つまり,海水より雨水の方が酸素16の割合が多い。
寒い気候では,大陸内部に雪が降り積もり,大陸氷床として成長。
軽い酸素を含む水が大陸にたまり,海水には思い酸素を含む水の割合が増える。
過去の海水の酸素同位体を測ればそのとき大陸氷床がどれだけ成長していたか,ひいては温度の指標となる。
試料の例として,海底堆積物中の有孔虫の殻をあげられる。その酸素同位体を測り海水の温度がわかる。
氷床コア
南極やグリーンランドの氷床には過去の寒暖の度合いや二酸化炭素濃度などの大気組成がわかる。
氷床掘削
https://www.sankei.com/photo/story/news/181002/sty1810020019-n1.html
新観測拠点絞り込み 100万年前の氷掘削(産経ニュース)
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V気候変動とその対処 (V章へ リンク)